審判たちの甲子園BACK NUMBER

「なんか嬉しかったな。これが高校野球や」9回2死、6点差でも日本文理は“諦めていなかった”…2009年の奇跡「終わらない夏」を体感した審判たちの証言 

text by

安藤嘉浩

安藤嘉浩Yoshihiro Ando

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2026/08/14 06:00

「なんか嬉しかったな。これが高校野球や」9回2死、6点差でも日本文理は“諦めていなかった”…2009年の奇跡「終わらない夏」を体感した審判たちの証言<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2009年、夏の甲子園決勝。中京大中京と対戦した日本文理は、6点差の9回2アウトから驚異の粘りを見せた

菊池雄星、今宮健太…逸材揃いだった2009年

 花巻東(岩手)の大型左腕、菊池雄星が注目を集めた大会だった。のちに大リーガーとなり、現在もエンゼルスで投げている、あの菊池だ。

 春の選抜大会では2試合連続完封を記録し、岩手県勢初の決勝進出に貢献した。決勝では、同年秋のプロ野球ドラフト会議で菊池とともに1位指名を受けて広島カープに入団する清峰(長崎)の今村猛と投げ合い、0-1で敗れたものの、準優勝に輝いた。

 夏は1回戦で、その清峰を破って長崎代表になった長崎日大と対戦。やはりのちに広島カープのエースとなる大瀬良大地と投げ合った。準々決勝では今宮健太を擁する明豊(大分)を下した。プロ野球ソフトバンクホークスで遊撃手として大成する今宮だが、高校時代は本格派投手だった。

ADVERTISEMENT

 この試合で菊池は背中の故障を悪化させて5回途中で降板してしまう。準決勝では11球しか投げられず、中京大中京に大差で敗れた。

 決勝は校名が中京商だった1966年以来となる43年ぶり7度目の優勝を目指す名門・中京大中京と、新潟県勢として初めて決勝に進出した日本文理の顔合わせとなった。

 強力打線を擁する中京大中京に対し、日本文理も全4試合で二ケタ安打をマークする活発な打線で勝ち上がった。投手陣は左ひざの故障明けだったエース・堂林翔太を2年生右腕の森本隼平がカバーする中京大中京に対し、日本文理は伊藤直輝が準決勝まで一人で投げ抜いている。

 戦前の予想は中京大中京がやや優位か。伊藤のスタミナ次第では一方的な展開になる可能性もあるというのが大方の見方だった。

 試合は1回、中京大中京が2点を先取する。2死二塁から、4番の堂林が右中間席に豪快な一発を打ち込んだ。エースで4番の堂林も卒業後は広島カープに入団し、打者に専念して長くプレーすることになる。

 一方の日本文理も、2番・高橋隼之介の一発などで対抗し、2-2で5回を終えた。

「好ゲームでしたね」。三塁塁審の野口が振り返る。グラウンド整備で引き揚げた際、「選手がこれだけ頑張っとんのやから、自分もさらに気を引き締めていこう」と思ったという。

【次ページ】 堂林翔太が奪えなかった「最後の1アウト」

BACK 1 2 3 NEXT
#中京大中京高校
#日本文理高校
#伊藤直輝
#切手孝太
#高橋隼之介
#堂林翔太
#森本隼平
#大藤敏行
#日野高
#野口敏行
#田中豊久
#長谷川次郎
#菊池雄星
#今宮健太
#大瀬良大地

高校野球の前後の記事

ページトップ