- #1
- #2
審判たちの甲子園BACK NUMBER
金足農の伝説“あのサヨナラ2ランスクイズ”現場の審判は何を感じていた?「最後まで分からんのが甲子園なんよ…」“史上最高試合”で敗れた塁審の証言
posted2026/08/13 06:00
2018年夏の準々決勝で金足農が決めたサヨナラ2ランスクイズ。審判たちはどんな思いでこの瞬間に立ち会っていたのか
text by

安藤嘉浩Yoshihiro Ando
photograph by
JIJI PRESS
◆◆◆
2018年夏の甲子園は劇的な試合が多かった。史上最多の56校が阪神甲子園球場に集った第100回全国高校野球選手権記念大会。春夏連覇を目指す大阪桐蔭(北大阪)を筆頭に個性的な実力校がそろう中で、勝ち上がるごとに注目度を増していったのが秋田代表の金足農だった。
いわゆる「カナノウ旋風」である。
ADVERTISEMENT
その最も象徴的なシーンである準々決勝のサヨナラ2ランスクイズは、多くの高校野球ファンの記憶に今も新しい。
選手とともにグラウンドに立っていた審判員は、どんな思いでこの熱戦に立ち会い、どんなことを感じていたのだろうか。
「投手のテンポを審判が崩さんように」球審の回想
「とにかく両チームの投手が素晴らしかった。とくにテンポがよかったんで、それを審判が崩さんように心がけていましたね」
球審を務めた田中豊久は、静かに振り返る。
大阪府立花園高校、大阪経済大学で野球に打ち込んだ田中は、高校の先輩から誘われ、30歳で審判員としての活動をスタートした。大阪府高校野球連盟で経験を積み、2004年からは春夏の甲子園大会でもジャッジしてきた。
2013年夏の2回戦では、明徳義塾(高知)の岸潤一郎と、瀬戸内(広島)の山岡泰輔による投手戦に、球審として立ち会っている。
「二人ともコントロールがいい。ストレートは伸び、変化球は切れる。そして、テンポが素晴らしかった。高校生とは思えないピッチャーでした」
球審の自分の構えが遅れたりして、両投手のリズムを崩すようなことだけはしたくない。試合は2-1で明徳義塾の岸が投げ勝った。試合時間1時間49分。
「私らにとって、試合にいいも悪いもないのですが、あの二人の試合に立たせてもらえたのはありがたかったと思います」
金足農の吉田輝星、近江の佐合大輔の先発で始まった準々決勝も、素晴らしいテンポで進んだ。4回表、近江が均衡を破る。相手のエラーで出塁した走者を、6番・住谷湧也の右翼線二塁打で返した。

