博多の人・王貞治BACK NUMBER
「お前の球種、全部当てたるわ」名投手コーチ・尾花高夫がホークスの0勝投手3人に2桁勝利させた“方程式”「考え方次第で二流も一流になれる」
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byKazuaki Nishiyama
posted2026/08/06 11:05
尾花高夫(中央)が、ホークスの弱点である投手陣を整備し0勝投手たちに2桁勝利を挙げさせた「方程式」とは?
若田部健一は、1991年ドラフト1位。ルーキーイヤーの1992年は10勝、3年目の1994年にも10勝を挙げるなど、若きエース格として活躍。1997年までの6シーズンで計35勝を稼ぎながら、1998年は0勝に終わっていた。
尾花は、コーチ就任が決まってから、1998年の全試合を映像で確認、投手陣のデータを洗い直すという、途方もない作業を続けていた。その中で、尾花は若田部が投球時に繰り返していた「癖」を見抜いた。
お前の球種、けん制、全部当てたる
若田部をビデオ室に呼ぶと、2人で15分間、ある試合の投球シーンを見続けた。
ADVERTISEMENT
「おい、何か気づいたか?」
絶句した若田部は、怪訝な表情を浮かべていたという。
「よし、今からお前の球種、けん制、全部当てたるわ」
ストレート。これはスライダー。ここでけん制が入る。
尾花は見事なまでに、映像の若田部が投げる球種を、投げる前にピタリと当てた。
「ほら、グラブが立ったやろ」「これは、グラブが寝てるやろ?」
振りかぶってのワインドアップで投げる若田部が、右腕を振り下ろす際、前方でバランスを取る左手の動きが、ストレートと変化球でわずかに違っていて、それがグラブの向きによって、バレてしまっているというのだ。
「お前の球種、全部分かって、バッターは打ってるんや。とにかく、この癖を直せ。そうしたら、お前は10勝できる。騙されたと思ってやってみろ」
ドラ1右腕の「癖」
永井智浩は、1997年のドラフト1位右腕。JR東海から逆指名で入団しながら、ルーキーイヤーは未勝利。150キロ超のストレートとフォークのコンビネーションが生命線でもある。ところが、フォークを投げるとき、永井の口が不思議と「尖る」ことに、尾花は気づいた。ただ、癖を直すのは最優先だが、その癖を自覚することも重要だという。

