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「薬物乱用で心臓が停止」「しぼんだ身体、10秒で失神」“霊長類ヒト科最強”マーク・ケアーの悲劇「突然のメール…ハリウッドで映画化?」報われた人生
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長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2026/07/05 11:22
藤田和之に攻め込まれ、弱気な表情を見せるマーク・ケアー。“霊長類ヒト科最強”と呼ばれた強さは失われていた
やがて格闘技ファンはケアーに対する興味を失った。彼はもう完全に“終わった選手”になっていた。そして2009年8月にキング・モーに敗れて以降、彼を登用するプロモーターはおらず、人知れずキャリアを終えた。
カナダから届いたメール「写真を貸してほしい」
2024年に入ってすぐのことだった。私のもとにカナダから一通のメールが届いた。「マーク・ケアーの『The Smashing Machine』をハリウッドで映画化するので、ケアーの写真を貸してほしい」という内容だった。既に監督や主演も決まっており、映画が製作されるのは間違いないようだ。私はすぐに担当者とのやり取りをスタートして、必要な写真を手配した。
その後、完成した映画は2025年のヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞。ワールドプレミア上映にはケアーも参加し、自身の役を演じたドウェイン・ジョンソンらとレッドカーペットを歩いた。一度は忘れ去られた「最強の男」が、再び晴れ舞台に立つことができたのだ。
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私生活では8年ほど前に息子から直接「パパ、お酒をやめてくれないか?」と頼まれ、周囲をこれ以上傷つけないために断酒を決意。それ以来、アルコールは一切口にしていないという。依存症を克服したケアーは、自身の壮絶な経験を通じて、薬物やアルコールの依存に苦しむ人々の支援や啓蒙活動を行っている。現在はアリゾナ州フェニックスで、自動車ディーラーとして働いているそうだ。
私はこれまで数多くの格闘家を見てきたが、引退後は行き方知れずになることが多い。マイク・ベルナルドやケビン・ランデルマンのように、若くしてこの世を去るファイターも少なくない。
ケアーにしても、このまま忘れられた格闘家として人生を終えることもあり得たかもしれない。だが、自身の半生が映画化されたことにより、「スマッシング・マシーン」は再びスポットライトを浴びることになったのだ。ラストシーンでは彼自身が登場し、今日の姿を見ることができる。
2025年にはUFCの殿堂入りを果たし、ファイターとしての名誉も回復された。
現役中は波乱万丈で、壮絶そのもののキャリアだった。肉体的にも精神的にも、ケアーが多大なダメージを負っていたのは間違いない。危機的な状況も幾度となくあっただろう。
だが、マーク・ケアーというひとりのファイターが歩んだ人生は、いま、ようやく報われたのではないか。映画のエンドロールを目にしながら、彼の黄金期を知るカメラマンのひとりとして、そんなことを考えていた。
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