沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
「馬を信じて」ロブチェンと松山弘平は“あえて動かなかった”「勝負に出た川田将雅、ルメールも完璧に…」日本ダービーを熱くした“名手たちの思惑”
posted2026/06/01 17:02
見事ダービージョッキーとなった松山弘平(36歳)。二冠馬ロブチェンの馬上で感極まる
text by

島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Keiji Ishikawa
新たに誕生したダービージョッキーの目には涙があった。
3歳馬の頂点を決める第93回日本ダービー(5月31日、東京芝2400m、3歳GI)で、松山弘平が騎乗した1番人気のロブチェン(牡、父ワールドプレミア、栗東・杉山晴紀厩舎)が激しい叩き合いを制して優勝。史上25頭目となる、皐月賞との二冠制覇を達成した。
「まさか松山弘平がダービージョッキーになるなんて」
ゴール前の攻防には、頂上決戦にふさわしい凄まじさがあった。
ADVERTISEMENT
先に抜け出した川田将雅のバステールを、クリストフ・ルメールのパントルナイーフと松山のロブチェンがかわす。そこから2頭の叩き合いになった。
ゴールまで残り7、8完歩のところではパントルナイーフが前に出ていた。
外のロブチェンが1完歩ごとに差を縮め、パントルナイーフと並んだところがゴールだった。肉眼ではどちらが勝ったのかわからなかった。
リプレイ映像が流れると、場内が沸いた。
最後の首の上げ下げで、ロブチェンが頭差だけ前に出ていたのだ。
ロブチェンは2023年に日本で生まれた7944頭のサラブレッドの頂点に立ち、松山は11回目の挑戦で初めてダービーを制した。
「着差はわずかでしたけれども、勝ち取ってくれて、本当にロブチェンの強さだなと思います」
ウイニングランをし、8万4731人が詰めかけたスタンド前に戻ってきた松山は、ゴーグルの奥で涙を浮かべていた。
「自然と涙が止まらなくなりました。これだけたくさんの人に迎えてもらって、本当に幸せだと思いましたし、これが日本ダービーなんだとあらためて感じました」
アルアインで2017年の皐月賞を勝ち、GI初制覇を果たしたときも涙があった。あのときは、感極まった涙に見えたが、今回は笑顔に涙が浮かんでいた。
「本当にまさか松山弘平がダービージョッキーになるなんて信じられない気持ちです」
皐月賞をレコードで逃げ切った馬が、ダービーで中団から抜け出して二冠制覇をなし遂げた。距離が400m延びるダービーでは抑えが利かなくなって暴走する危険もあったはずだが、スタート直後は逆に促しながらの追走となったにもかかわらず、まったく掛かるところがなかった。
「自在性があるというのは、本当に能力が高いということだと思う」と松山。


