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「欲がない勝負師、そうですね(苦笑)」39歳のA級最年長棋士がAI依存を捨てて…羽生善治の「懐の深さ」に見た将棋の本質とは〈広瀬章人インタビュー〉

posted2026/06/07 17:00

 
「欲がない勝負師、そうですね(苦笑)」39歳のA級最年長棋士がAI依存を捨てて…羽生善治の「懐の深さ」に見た将棋の本質とは〈広瀬章人インタビュー〉<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

順位戦A級復帰を決めた広瀬章人九段。39歳の今、将棋界の最前線で考えていることとは

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大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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日本将棋連盟

 トップ棋士として長年存在感を示す広瀬章人九段(39歳)に、現代将棋への向き合い方を聞いた。〈NumberWebインタビュー/全3回。棋士の段位・肩書は初出以外省略〉

 39歳でA級最年長棋士として新シーズンを迎える広瀬章人九段。前期は11勝1敗の圧倒的な成績でA級復帰を果たしたが、その裏にはAI研究への依存を見直し、詰将棋などアナログな勉強法へ回帰する決断があった。年齢を重ねることで変化する自身の将棋とどう向き合い、藤井聡太竜王・名人ら若き才能が席巻する現代将棋界をどう戦い抜くのか。A級復帰の原動力となった思考の転換と、ベテランならではの年齢論を語る。

なぜ彼は変わったのか…AI依存を捨てたA級棋士

――広瀬さんはヒューリック杯第97期棋聖戦で準決勝まで勝ち上がっていましたが、4月23日に羽生善治九段と対戦して惜しくも敗れました。まずこの将棋を振り返っていただけますか?

「先手番で相掛かりを採用したのですが、序盤の出だしが珍しかったんですよね。先に歩損したので、その代償として自分からどう動くかという将棋になりました。研究していた形ではなくて、なんとなくこんな形かなと手探りで指していました。ただ後で振り返ってみたら、それほど悪い構想ではなかった。そこは改善というか成長した部分だと思います。ただ、その後で読みの精度に欠けたところが2つあって、以降はノーチャンスでした」

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――その改善というのを具体的に言うと?

「相掛かりの構想です。1歩損をした後にどう攻めの態勢を作っていくか難しかったのですが、実戦で考えたことを後でAI(人工知能)と照らし合わせてみたら、そんなに悪くなかったんです。右玉にして意外にいい勝負というのもそうですし、桂馬を1枚取らせて指すという判断もまずまずでした。自分は序盤が得意ではなくて、昔はそもそも知識がありませんでした。だからずっと課題ではあったのですが、本局に関しては改善があったと思います」

――長年、広瀬さんを取材してきて、勝負師にしてはあまり欲がない人という印象があります。

「はい、そうです(苦笑)」

勝負師の本音…「欲がない」男の静かなる闘争心

――とはいえ、色気みたいなものはありましたか? ベスト4まで行くとさすがに挑戦が見えてくるでしょうから。

「当時のレーティングでいうと、準決勝に勝ち上がった4人のうち自分と羽生さんと服部君(慎一郎七段)の3人がほとんど同じような感じでした。だから色気というか、誰が挑戦者になってもおかしくないという心境ではありましたね」

――広瀬さんは勝っても負けても常に淡々としていますが、この準決勝に関して残念という気持ちはありますか?

【次ページ】 55歳の伝説…羽生の震えに見た勝負魂

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