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ボクシングPRESSBACK NUMBER
中谷潤人“決戦前日の変貌”「井上尚弥にまったく萎縮していない…」それでもなぜ井上ペースに? 世界的カメラマンが痺れた“12分の攻防”「まるでSF映画」
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福田直樹Naoki Fukuda
photograph byNaoki Fukuda
posted2026/05/08 11:25
至高の技術戦を繰り広げた井上尚弥と中谷潤人。リングサイドで撮影したカメラマンの福田直樹氏が、ボクシング史に残る一戦を振り返る
後楽園ホールで行われた前日計量では、中谷選手の身体が目を引きました。胸や肩のバランスがすごく整っていて、2戦目にしてスーパーバンタム級が“適正体重”になっていた。そして中谷選手が観客の前で雄叫びをあげたとき、それまでのおとなしい雰囲気が一変しました。抑制していたものを、ここから試合にかけて一気に爆発させようとしている――そんな印象を受けました。
もちろん井上選手も普段通り、見事な仕上がりでしたね。フェイスオフでも一歩前に出て、並の挑戦者なら威圧感に呑み込まれてしまうほどでしたが、中谷選手はまったく萎縮していなかった。15歳でアメリカに渡って、ルディ・エルナンデスの“無茶ぶり”ともいえる練習を散々やってきたわけですから。見た目はすらりとしていますが、気持ちも身体もとにかく芯が強いボクサーです。
主導権は井上尚弥に…「まるでSF映画」序盤の攻防
試合の話に入りたいと思います。じつは試合開始のゴングが鳴る直前から、井上選手はやる気満々の雰囲気で、レフェリーに止められるくらい前に出ていたんですよね。「行くぞ、行くぞ」と相手を警戒させておいて、実際には控えめにプレッシャーをかけていく……。そのあたりの駆け引きが非常に巧みだなと思いました。結果的に、その展開が4ラウンドまで続いたわけですから。
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中谷選手は適応能力の高い井上選手に“学習”させないように、あえて多彩なパンチを出さずに、打ち終わりのカウンター狙いに徹していました。その中谷選手の左を井上選手はギリギリのタイミングで外していましたが、もはや達人の領域というか、SF映画のようでしたね。どちらのパンチも当たりそうなのに、紙一重で当たらない。そんなやり取りに5万5000人の観客が完全に魅了されて、良質な緊張感が生まれていた。リングサイドで撮影しているこちらも、最初の12分間だけで痺れてしまうほどでした。
ただ、痺れる展開のなかでも、やはり序盤は井上選手のペースでした。手数で上回り、ジャブやストレートが深くはないもののヒットしていた。カウンターの外し方も絶妙でした。縦揺れと横のステップを織り交ぜながら、打ち終わりも決して同じ姿勢をとらず、的を絞らせない。序盤は抑え気味に入るのが中谷選手のプランだったとしても、4ラウンドまでフルマークでポイントを奪われたことは大きく響いた気がします。序盤の元気なうちにポイントを稼ぐのと、終盤に苦労してポイントをもぎ取るのとでは、やはり意味合いが異なると思うので。



