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長谷川穂積が感嘆「井上尚弥選手の反射は神がかっていました」中谷潤人の“左カウンター”はなぜ当たらなかった? 実況席から見た「驚異のステップ」

posted2026/05/07 17:02

 
長谷川穂積が感嘆「井上尚弥選手の反射は神がかっていました」中谷潤人の“左カウンター”はなぜ当たらなかった? 実況席から見た「驚異のステップ」<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

序盤、中谷潤人のカウンターを紙一重で回避する井上尚弥。空振りのたびに、東京ドームはどよめきに包まれた

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Hiroaki Finito Yamaguchi

東京ドームに5万5000人を集めた5月2日のスーパーバンタム級4団体統一戦は、チャンピオンの井上尚弥(大橋)が挑戦者の中谷潤人(M.T)に3-0判定勝ちを収めて幕を閉じた。井上の勝利は大方の予想通りながら、中谷も堂々と渡り合い、両者はフルラウンドを通してハイレベルな技術戦を繰り広げた。勝敗を分けたポイントはどこにあったのか。現地実況席で解説を務めた元3階級制覇王者の長谷川穂積さんに、じっくりと分析してもらった。(全3回の1回目)

長谷川穂積が注目した“井上尚弥の右ボディ”

 パワフルでスピードのある井上と、長身で独特なパンチの軌道を持つサウスポーの中谷。2人が対戦するといったいどんな化学反応が起きるのか。注目の立ち上がりは長谷川さんの目には予想通りと映った。

「お互いがお互いの距離を探り合うような立ち上がりでした。その中で井上選手が先手を取っていた。今回のような技術戦、神経戦では最初のラウンドを取ることはとても大事だと思うんです。わずかであっても気持ち的に有利になるので」

 互いにまずはディフェンスを重視し、パンチの交換は控え目なスタートだった。その中で長谷川さんが注目したのは井上の右ボディである。

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「井上選手が最初からボディを叩いたのはさすがだなと思いました。自分より身長が高い危険な相手とやるときはボディ打ちがものすごく大事なんです。別に効かせなくていい。ボディじゃなくても体のどこかにパンチを当てることで、踏み込みのタイミング、スピードが通用していると自分にインプットできる。ひとつ、安心感を得られる。逆に上を狙って空振りが一番良くない。『当たらない』という精神的なダメージがあるし、カウンターをもらう危険も高まります。井上選手は浅かったかもしれないけどしっかりパンチを届かせていました」

 中谷の立ち上がりが悪かったわけでは決してない。中谷は試合後、井上の学習能力の高さを警戒して「最初から手の内のすべてを明かさないようにした」という趣旨の発言をした。長谷川さんは中谷の発言にうなずきつつも、井上のゲーム運びが一枚上だったと見た。

【次ページ】 中谷潤人は「手を出させてもらえなかった」

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