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中谷潤人との激闘「今までなかった」“井上尚弥の異変”を長谷川穂積は見た…実況席で「うらやましい」と言った“ある瞬間”「あれは至福のときなんです」
posted2026/05/07 17:03
中谷潤人と至高の技術戦を繰り広げた井上尚弥。実況席で解説を務めた長谷川穂積さんも思わず「うらやましい」と口にした
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Kitagawa
「ああいうシーンは今までなかった」井上尚弥の異変
注目の一戦はスタートから井上が主導権を握った。4回まではフルマークでチャンピオンが押さえた。巻き返さなければいけない中谷は5回から反撃の態勢に入った。
「中谷選手は展開を変える必要がありました。5ラウンドから前に出ましたけど、本当に攻勢に出たのは8ラウンドからでした。結果論になりますけど、ちょっと遅かったとは思います。8ラウンドのボクシングを4ラウンドくらいからやれていたらまた違った展開になっていたかもしれません」
8回は3ジャッジとも中谷を支持した。井上は少し疲れているようにも見えた。長谷川さんも井上の変化を見てとった。
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「映像を見返すとそれほどでもなかったんですけど、生でリング下から見ていたときには『あれ、ちょっと疲れたかな』と思いました。急に動きが悪くなったというか、らしくないというか。普段の井上選手はああいう展開になっても必ずいいカウンターを一発バーンと入れるとか、打たれたままで黙っていないんですよ。それが防御だけで終わるシーンが出てきた。井上選手があんなにちゃんとラウンドを取られたことって今までなかったと思うのでちょっと驚きました」
井上はスタートから激しく体を動かし、懐の深いサウスポーにパンチを当てるべく目いっぱいの踏み込みで中谷に迫った。井上は8回以降のシーンを「ポイントは大丈夫ということで、少し体力を温存しながら受けに回った」と説明した。
「踏み込むタイミングを頭で探りながら踏み込む。これはしんどいんです。サンドバッグに思い切り踏み込んで打つのはしんどいけど体力があればできる。向こうのパンチが飛んでこないタイミングをずっと探しながら、作りながら、今だと思ったときにはもう踏み込んでいないといけない。『今だ、踏み込もう』ではもう遅い。それを序盤から繰り返してきたので、脳の疲労はあったと思います」

