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中谷潤人に負けたボクサーの異変「“効いてない”のに、ドロっとした血尿が…」望月直樹が試合後に知った“中谷の本当の強さ”「何回やっても勝てない」
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森合正範Masanori Moriai
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2026/05/01 11:07
望月直樹が中谷潤人と対戦した2019年2月2日の日本フライ級王座決定戦。試合中には気づかなかったもの、体には深いダメージが刻まれていた
中谷潤人との日本タイトルマッチが決まるまで
その後、6連勝を遂げ、光が射してきたころ、長身のサウスポーがスパーリングをするため、横浜光ジムにやってきた。
全日本新人王になったばかりの中谷潤人だった。
スパーリングで中谷と相対した。望月は足を使い、遠い距離から出入りのスピードと横の動きを交えてフットワークで翻弄した。中谷が追いかけてきたところに、右からの左フックが入った。拳に感触が残る。これ、試合ならきっと倒れているな。手応えのあるスパーリングだった。
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それから数年が過ぎた2019年、空位となった日本フライ級王座決定戦を迎えた。日本ランク1位で17戦全勝12KOを誇る中谷の相手が決まらないという。既に世界ランカーとなった中谷の強さを知っている日本ランク上位者が対戦を断っていた。
「もしかしたら、中谷とやるかもしれないぞ」
会長の石井からそう告げられた。
「もちろん、全然、やりますよ!」
日本ランク6位の望月まで回ってくる可能性があるという。スパーリングから時が経ち、中谷が変貌を遂げているのは知っていた。だが、望月だって18戦15勝8KO3敗とキャリアを積んできた。怖いものは何もない。「世界に最も近い」と騒がれている中谷に日本タイトルマッチで勝つ、これほど誇らしいことはないじゃないか。気持ちが乗った。
母は中谷潤人の名を知らなかった。
「直樹から『相手はランク1位の人で、他のみんなが断っているから、僕まで回ってきたよ』って聞きました。『まあ、頑張ってね』くらいの感じではあったんですけど……」
2019年2月2日、後楽園ホールは熱気に包まれていた。望月にとって、日本王座は目標のベルト。気合いが入った。
中谷戦のプランは二つあった。一つは距離を詰めての接近戦で崩していく。もう一つはスパーリングのように足を使った出入りのボクシングをしつつ、左右の動きを入れる。どちらかというと後者のプランが有力だった。
望月の誤算「中谷はスパーとは別人になっていた」
試合開始のゴングが鳴った。
中谷が前へ出てきた。えっ、いきなり来るのか……。長身のサウスポーは後ろ重心に構えて、序盤は様子を見てくると思っていた。
開始40秒、中谷が左フックを放ち、ラッシュをかけてきた。パンチがガードの上に当たる。懸命に凌ぐ。だが、右アッパーを食らった。一瞬、腰が砕ける。ダメだ、ダメだ、もう行くしかない。必死に前へ出た。

