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中谷潤人に命じた「井上尚弥とはスパー禁止だ」策士ルディが“怪物の異様さ”に気づいた日「あのイノウエと戦う…考えただけでナーバスになったよ」
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宮田有理子Yuriko Miyata
photograph byNaoki Fukuda
posted2026/04/30 11:30
中谷潤人をトップボクサーへと育て上げたルディ・エルナンデス。名伯楽はいつ「井上尚弥の強さ」に気づき、愛弟子との対決を予感したのか
高みへとどんどん駆け上がる井上を、「ジュントがいつか戦うかもしれない相手」としてルディが初めて、かすかに意識したのは、愛弟子がフライ級で世界王座に就いた時だったという。
2020年11月。WBO世界フライ級王座決定戦で、上位ランカーのジーメル・マグラモ(フィリピン)を見事に攻略し、中谷は世界チャンピオンになった。新型コロナウィルスのパンデミックに翻弄され、2度の延期を乗り越えて、日本でその年ただ一人、世界チャンピオンになってみせた愛弟子を、渡航制限に阻まれたルディは遠隔で祝福した。
中谷潤人に命じた「井上尚弥とのスパーリング禁止令」
やがて一つの約束を交わす。ナオヤ・イノウエと、スパーリングでも手合わせしてはいけない。
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「遠い未来でも、イノウエと戦うことになるかもしれない。その可能性はゼロじゃないと、初めて考えたからだ。考えただけでナーバスになったよ。イノウエはスペシャルなボクサーだ。リングの上で向き合ったら、相手をすっかり学習してしまう。ジュントと向き合ったら、ジュントというボクサーを解き明かし、知り尽くすだろう。だから、スパーを禁じたんだ」
つまり2026年5月2日は、正真正銘のぶっつけ本番である。
井上尚弥というボクサーを誰よりリスペクトしてきたと自負するルディは、この戦いが究極に困難な仕事であることを誰より理解している。そして、世界3階級制覇を成してなお変わることなく忠実なボクシングの生徒であり続ける教え子の傍らで、奮い立つ。
「私にとって、イノウエこそ現役ナンバーワンのボクサーだ。すごいKOを生み出すし、技術戦でも完勝する。彼はダウンしたことがある? もちろんだ。歴史上のグレートたち、シュガー・レイ・レナードだってトーマス・ハーンズだって倒される。でも、グレートだろう? イノウエがダウンしたことがあるからといって、それが彼の弱点だとはまったく思わない。その後に何が起きる? 彼は立ち上がり、相手を圧倒してKO勝ちする本物の戦士さ。スピードとパワーはジュントよりも上だ。今回もイノウエが勝つ? 当然、8割の人はそう思うだろう。しかし、我々は少し違う意見だ。不可能はない。同じ人間だからね。我々にとって、ものすごく難しい戦いになる。けれどイノウエにとっても、難しい戦いになるはずなんだ。ジュントは、複雑なボクサーだからね」
<続く>

