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「最後の最後で迷惑をかけて」WBCで鈴木誠也に起きた“悲劇” メジャー5年目を前に語っていた覚悟とは…今永昇太も驚き「すごいっすよ。何がすごいかって…」
posted2026/04/01 17:00
WBCでは4試合に出場し2本塁打を放ったが、準々決勝のベネズエラ戦で負傷交代となった鈴木誠也
text by

笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Nanae Suzuki
発売中のNumber1140号に掲載の[契約最終年に向けて]鈴木誠也「やることは変わらない」より内容を一部抜粋してお届けします。
WBCで鈴木誠也に起きた悲劇
メジャーリーグの球場には、戦いを盛り上げるために「フィールド・コーディネート」が施されている。スピード感、臨場感を演出するために、ベース周辺の土に多くの水が撒かれ、強く叩き固められている。土のグラウンドではあるが、感触的にはコンクリートに近い。その上に緩衝材として粒子の粗い砂が大量に撒かれ、それが車輪の役割も果たし、スライディングのスピードがさらに加速する。そのリアリティを伝えようと、ベース付近に小型カメラが埋め込まれている。まさにエンターテインメントのために創られた環境が、そこにはある。
それはWBC準々決勝、日本対ベネズエラの試合が行われたマイアミ・マーリンズの本拠地ローンデポ・パークも同様で、そのことはメジャーで4年間もプレーした鈴木誠也にとっては百も承知である。
しかし、悲劇は起こった。
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初回、二盗に失敗した鈴木が右膝を押さえて動けない。ヘッドスライディングの際、フィールドに強く打ちつけたのだろう。負ければ終わりの一戦に気持ちが入り、気合いがいつも以上のスピードを生み、そのエネルギーが固い地面と膝の強い衝突を生んでしまった。2024年のワールドシリーズ第2戦で、二盗を狙った大谷翔平がスライディングの際に左手を強く突き、左肩を脱臼したのと、状況としては似ている。鈴木の場合も大舞台でいつもと違う力が働いたからこそ、起きた悲劇と言える。
鈴木の顔には苦悶というより、恐れが浮かんでいた。事の重大さは、その表情から伝わってきた。
「ケガだけはしないように」
キャンプ中から何度もこの言葉を繰り返してきた男のWBCは、今回も志半ばで終わった。
「最後の最後で迷惑をかけて申し訳ない」
ベネズエラ戦に敗れた後、鈴木はメディアに「最後の最後で迷惑をかけて申し訳ない」とコメントした。彼を責める者などどこにもいないだろうが、彼にとっては左脇腹を痛めて直前に辞退した'23年の前回大会に続く負傷離脱だ。その胸中は察するに余りある。ましてや、彼が今大会前の春季キャンプからWBCに向けて並々ならぬ闘志を燃やし、黙々と努力を重ねていた姿を取材していた者としては尚更のこととなった。

