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「日本最速の40歳」はなぜ“神ペーサー”と呼ばれる? 上野裕一郎のマラソンペースメーカー術「緻密・丁寧・安定感」の職人技を語る
text by

佐藤俊Shun Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2026/03/30 06:00
40歳にしてマラソンの「神ペーサー」と言われるようになった上野裕一郎。その経緯を聞いた
「最初、1kmのラップが2分59秒だとします。僕は、25kmまでのトータルのタイムと1kmごとのペースをすり合わせていきたいんです。自分のレースではあまり時計は気にしないですが、自分のレースではないからこそ、常にチェックしています」
東京マラソンでも正確に走っていた
また、レース中にはよくうしろを振り向いている。
「それは、走っていると僕と、ケニア人の他のペーサーの間が開く時があるからです。たとえば東京マラソンの時、僕は1km単位で正確に走っているので、他のペーサーにもついて来てほしかった。じゃないと僕がレースを荒らしているみたいに見えるじゃないですか。
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でも、彼らは自分のペースで走っていて、5kmぐらいになると上げてくるんです。なぜかというと設定タイムと合わせないといけないから。海外のペーサーを見ていると、5kmの設定タイムに合えばいいみたいな感じですが、僕は1kmずつ気にしたいんですよ」
タイムが重要な陸上において、アバウトさを排除する上野の丁寧な仕事ぶりが伝わってくる。給水場が近づくと「全体的に左側に寄ろう」と声をかけて意識づけする。選手が給水を取ることを優先し、上野は一番遠い先にあるジェネラルを取ることが多い。衝突や転倒を避けるためだ。
また、折り返しが近づくと「Uターン」と声を上げて選手に知らせている。そうした細かい気遣いが、多くのランナーから「神ペーサー」「職人技」と称賛されている要因なのだ。
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