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[私とラン]大友康平「歌い続けるために」
text by

林田順子Junko Hayashida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2026/03/21 11:01
「ミック・ジャガーなんて82歳なのに、体脂肪率は…」
「走っているときに、その日のセットリストの歌詞をずっと頭の中で反芻するんですよ。普通はスラスラ~っと出るんですけど、途中で引っ掛かっちゃった曲はやばいですね。最近はプロンプターを使うミュージシンャンも多いんだけど、歌詞を忘れてから見ても、該当する部分にスッと目がいかないでしょ? だから結局プロンプターを使う人はガン見しちゃう。そうすると絶対に視線が下がるんですよ。あれは格好悪いと僕は思っていて。だから走りながら、歌詞を辿っていくんです」
ツアーで訪れる全国各地のライブ会場近くのランニングコースも頭に入っている。
「豊洲PITなら近くの運河沿い。あそこはいい風も吹いて、ランニングには最高。日本青年館だったら国立競技場だし、六本木のEXシアターなら、青山墓地を横目に進んで、絵画館のところで帰ってくる。大阪の森ノ宮ピロティホールは大阪城公園を2周する走り甲斐のあるコースだね」
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最高のパフォーマンスをファンに見せたい。その想いの原点は、ロックンロールのレジェンドたちの姿にある。オンタイムで見てきたローリング・ストーンズや、ビートルズ、レッド・ツェッペリン……。そのメンバーは今なお精力的に音楽活動を続けている。
「ミック・ジャガーなんてもう82歳なのに、体脂肪率は1桁台ですからね。20年ぐらい前に武道館でストーンズのライブがあったんだけど、ミックは相変わらずアクティブですごいんですよ。でもロン・ウッドやキース・リチャーズはもうヨレヨレ。それなのにふざけているもんだから、ミックが途中で怒っちゃって(笑)。久々に来日したときのポール・マッカートニーは、水も飲まないし、MCもせず、ずっとステージに立って歌いっぱなし。ビートルズのときのキーで歌っているんですから、良い意味で化け物ですよ」
自身もステージに立ち続けているからこそ、その凄さはリアルに迫ってくる。「どんな人でも年々筋肉や体力は絶対落ちる。だから、いかに維持するか、下降線を緩くするかが大切なんですよね」と語る。
「いくら抗(あらが)っても、18歳のときに作った曲なんて、さすがに原曲キーは無理です。それに聞いている方が違和感がなければキーを下げてもいいんです。ただね、頭の中には肯定する自分と否定する自分、2人の自分がうごめいていて、『なかなかいいじゃないか』っていう声と『お前これぐらいでいいと思っているのか』という声が聞こえてくる。で、こいつをギャフンと言わせたいわけですよ。自分に対しての意地ですよね。やっぱり男って痩せ我慢なんですよ。永遠にモテたいし、永遠に色々なことに興味を持って頭を突っ込んでいたいし、夢中で生きていきたい。苦しいけど『ぜ、全然平気だよ!』って言いながら、膝がガクガクしているみたいなやつが、すげえ格好いい(笑)。だからライブだって止まって歌ってもいいわけだけど、僕の場合はのべつ幕なしに走り回って、ハアハアやってるわけです。無理せず、格好良く歳を取っている人もいるけれど、そうするとちょっと男の哀愁が感じられないと思うんですよ」
苦しくても痩せ我慢。これはランニングでも一緒だ。
