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侍ジャパンPRESSBACK NUMBER
WBC“失意のベスト8”のウラで…阪神・坂本誠志郎32歳が背負っていた“ある思い”「きっしゃん(岸田行倫)のことを今でも考える」知られざる捕手陣の絆
text by

佐井陽介Yosuke Sai
photograph byHideki Sugiyama
posted2026/03/18 17:00
2月の宮崎キャンプで伊藤大海と話し込む坂本誠志郎。“落選組”の思いも背負ってWBCに臨んでいた
赤いヘルメットが再び脚光を浴びたのは1次ラウンド3戦目、オーストラリア戦の試合開始直前のことだった。選手紹介の時間帯、野手最年少の小園海斗が坂本のヘルメットをかぶって笑いを誘っていたのだ。ナインの注目を集める上で、真っ赤に染まったヘルメットは小道具として最適だったのだろう。裏を返せば、赤色のヘルメットがチームメートでもなかなか気軽に触りづらい「試合用」ではなくなっていた事実を図らずも証明していた。
“映える”赤ではなく“映えない”青。自分の見え方よりも投手や仲間の胸の内に寄り添う。それが坂本誠志郎の信条なのだ。
落選した巨人・岸田行倫への思い
まだ沖縄・宜野座で阪神キャンプに参加していた2月上旬、タイガースの主将という立場でありながら、巨人の捕手、岸田行倫の心中をおもんぱかっていた。
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強肩強打を売りにするライバル球団の主将は今春、WBCメンバーから落選していた。昨秋の侍ジャパンでしのぎを削った捕手4人のうち、選ばれなかったのは1人だけだった。
「僕がきっしゃん(岸田)の立場だったら、そんなことを言われたくないかもしれない。でも、僕はきっしゃんのことを今でも考えてしまいます。WBCではきっしゃんも一緒にやっている感覚になるかもしれません」
坂本は「偉そうなことを言える立場ではないけれど」と何度も前置きした上で、元チームメートに対する感情を丁寧に言葉で紡いでいた。
4人は昨秋、今回のWBCから初めて導入されたピッチコム、ピッチクロックへの対応に悪戦苦闘していた。苦楽を共にした絆は、周囲が想像するよりもはるかに深かったのである。
一方で、坂本が背負うと決めた思いは岸田のそれだけにとどまらなかった。
<続く>

