ボクシングPRESSBACK NUMBER

井上尚弥vs中谷潤人「中谷がダウンを奪う可能性は十分ある」英国人記者が期待する“クレイジーな展開”「それでもモンスターへの逆張りはできない」 

text by

杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

PROFILE

photograph byHiroaki Finito Yamaguchi

posted2026/03/07 11:02

井上尚弥vs中谷潤人「中谷がダウンを奪う可能性は十分ある」英国人記者が期待する“クレイジーな展開”「それでもモンスターへの逆張りはできない」<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

記者会見で意気込みを語る井上尚弥

 具体的な試合展開を占っておくと、奇妙なほどの強烈な緊張感に包まれながら、劇的な瞬間が生まれる戦いになると思う。

 イノウエが昨年9月のムロジョン・アフマダリエフ戦のように一方的にアウトボクシングで支配する展開は想像していない。ナカタニの危険性を理解しているため、ピカソ戦のように自信満々にノンストップで攻め続ける姿も思い描いていない。だから真っ向からの打ち合いになるとは思わないが、両者ともどこかで必ず積極的に攻めてくる。あれほどハイレベルな者同士だと、戦術的な展開になる可能性もあるが、この2人の場合はどちらかが主導権を握ろうとして出てくるだろう。いずれかが攻勢に出て、打ち合いを仕掛ける。そこで何かクレイジーなことが起こる。

 こうしたPFP級同士の頂上決戦で最も盛り上がるのは、ダウンが生まれたとき。ダウンがあれば、もう一方は追いかけざるを得なくなり、そこに“電気”が走る。イノウエが攻め込み、ナカタニが打ち返し、どちらかが吹き飛ぶ――そういう場面が想像できる。両者にパワーがあるからこそ、衝撃的なシーンが起こり得るのだ。

ADVERTISEMENT

 両者ともエリートであるがゆえ、攻めるタイミングを選んでくるに違いない。普通のボクシングマッチのように見えて、突然爆発し、また落ち着き、再び爆発し、また落ち着く――そんな美しい波のある展開になるのではないか。それが私の望む形でもある。

「私は“逆張り”はできない」

 最終的に、勝ち残るのはどちらなのか。私はナカタニのトレーナーであるルディ・エルナンデスを心から尊敬している。本当に品格のある人物で、しかも日本のボクシング事情にも非常に詳しい。おそらく日本国外のトレーナーの中では、誰よりも詳しいと言っていい。だからナカタニにとってルディはメジャー級の大きな財産だ。

 ルディは長年にわたってイノウエを研究してきたし、この試合をずっと待ち望んできた。ファンやジャーナリストが楽しみにしてきたのと同じように、トレーナーとしてもこの一戦を待望している。そんな要素も加味して、私はイノウエが苦しむ場面があると予想している。傷つけられる可能性もあるし、ダウンする可能性もあると思っている。まずはしっかりとしたテクニカルなボクシングの展開があって、その後、ダウンがきっかけになって激しい撃ち合いへと発展すると見ている。そして、最終的にはイノウエが中盤から終盤にかけてナカタニをストップすると思う。

 私は“モンスター”を相手に逆張りはできない。イノウエは“証明すべきもの”があるときに一段階ギアを上げるタイプだ。今回は特に、世界中の視線が集まっていることを彼自身が分かっている。これまで“モンスター“の試合では誰かがあっさり食われ、”ゲームオーバー”という展開が多かった。しかし今回は、“ナカタニがやるかもしれない”と信じている人間が一定数いる。その事実が、モンスターをもう一段階引き上げる可能性がある。そして彼がもう一段階上に行くというのは、対戦相手にとって最悪の事態だ。

 そういった根拠から、現時点ではだいたい7〜9ラウンドあたりでのイノウエのKO勝ちを支持している。ナカタニは本物の難敵だが、イノウエは本当に素晴らしいプロフェッショナル。最終的には“モンスター”が何らかの形で勝利を手繰り寄せる術を見つけ出すと私は信じている。〈全2回〉

#1から読む
井上尚弥vs中谷潤人「日本ボクシングは物事の進め方が本当にうまい」英国人記者が驚いたベストカード実現の背景「欧米の放送局も“KO集”をつくるべきだ」

関連記事

BACK 1 2 3
#井上尚弥
#中谷潤人

ボクシングの前後の記事

ページトップ