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加藤大治郎の鈴鹿、ストーナーの早すぎる引退、ロッシの“キック”…グランプリ取材37年の遠藤記者が選ぶMotoGP「5大事件簿」
text by

遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2026/01/29 17:00
2003年の日本GP鈴鹿サーキットでピットアウトする加藤大治郎
⑤2022年ドイツGPで遂にノーポイント…最強ホンダの凋落
グランプリで通算800勝を超えるホンダが、最高峰クラスの優勝戦線から脱落して何年になるだろうか。ホンダが最後にタイトルを獲得したのは2019年のこと。この年、マルク・マルケスが自身6回目のタイトルを獲得したが、これを最後にホンダはチャンピオン争いとは無縁の戦いを続けていくことになる。こんな時代がやってくるとは想像できなかったし、僕にとっては大事件のひとつだった。
それを象徴するレースが2022年のドイツGPで、この大会でホンダは、40年ぶりに大会ノーポイントに終わった。僕がこの事件をいくつかの媒体でとりあげたところ、現場の幹部が「なんでこんなことを記事にするんだ」と怒っていたときいた。僕は情けない気持ちになった。
これまでもタイトルを獲れないシーズンはあったが、ホンダは常にチャンピオン争いの主役だった。21世紀になってからの最大のライバルはヤマハとドゥカティだったが、チャンピオン争いをしていたのが嘘のように、この数年は、コンストラクターズタイトルでも最下位争いが続いている。
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どうしてこんなことになったのだろうか。低迷の理由をひとことで言えば、厳しい技術規則の中で勝てるバイクがつくれなくなったことにある。ホンダが得意としてきたのは、エンジンのパフォーマンスと新しい技術を実戦に投入することで、それにより圧倒的アドバンテージを築いてきた。
しかし、近年のMotoGPクラスはイコールコンディションとするためのルールや技術規定の改定で、エンジン開発が大きく制限されている。その結果、技術競争の矛先はエアロパーツや既存の技術を磨く戦いへと変化。特にエアロパーツはマシンのパフォーマンス向上に大きく貢献するのだが、この分野でホンダは大きく遅れた。
ホンダのライダーになることが夢だった時代が嘘のように、トップライダーたちは勝てるマシンを求めて他メーカーへ流れていく。2020年の大けがから復帰したマルク・マルケスが、ホンダで苦戦している姿を見ているのは辛かった。ライダー人生は短い。ドゥカティに移籍が決まったときには、正直、これで良かったと思った。


