野球クロスロードBACK NUMBER
なぜ偏差値68“フツーの公立校”があの智弁学園を「7回コールド」圧倒できた?「集中よりも観察」《高市早苗首相の母校》畝傍高野球部が躍進中のワケ
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2026/02/03 11:05
奈良県屈指の公立進学校である畝傍高校の野球部を率いる雀部尚也監督。智弁学園や天理といった強豪を「普通の公立校」が倒すには何がいるのだろうか?
これらを踏まえ雀部がチームに求めるのは、精神の安定だ。24年秋の生駒高校との初戦で序盤から優位に試合を運びながら、中盤以降に追いつめられるとあたふたしてしまい、最終的に逆転負けを喫した。その教訓から「気持ちを上げすぎて戦ったらアカン」と、試合中の心の持ちようでも当たり前のレベルを上げた状態で戦うことを意識させている。
昨春には王者・智弁学園に「コールド勝ち」の衝撃
畝傍の地に足を付けた歩み。大きな成果となって結実したのが、昨年春の3回戦だ。智弁学園を相手に、8-1の7回コールドというセンセーショナルな勝利を飾ったのである。
特別なことをしない畝傍が大物食いを果たせたのは、日常の具現化だった。
ADVERTISEMENT
試合前のデータ収集は、他のチームと同じように手を尽くす。登板が予測されるピッチャーの特徴をまとめ「どの球を絞っていくか?」と分析する。バッターならば得意球や打球傾向などを整理しながら、配球や守備のシフトを練っていく。
この試合、2回に5連打を含む7本の長短打を集めて大量6点を先取できたのは、事前準備の賜物であったことは確かだ。雀部は「あの子らが感じたことをやってくれたのと、ラッキーなヒットが重なっただけ」と謙遜するが、相手が抱いた印象は異なる。智弁学園を率いる小坂将商は、畝傍の執拗な攻撃にこう目を丸くするのだ。
「別にうちは手を抜いていたわけじゃなくて。その日、一番よかった村上(雄星)を先発にしたんですけど、外のボールを逆方向にコンコンって、よう打たれてしまいました」
コースに逆らわずに打つ。それは野球における鉄則ではあるが、雀部にそのことを向けると「そんなには言ってないんですけどね」と、かぶりを振る。これ以上に畝傍が徹底していたのは、これもセオリーであるファーストストライクを積極的に打つことだった。
強豪のピッチャーとはいえ、深層心理としてはボール先行を避けるために初球からストライクを投げてくることが多い。力が劣るチームとなると、どうしてもファウルで粘り球数を投げさせたり、フォアボールを狙ったりしがちだが、雀部は先手必勝で活路を開く。

