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“高市早苗首相の母校”が挑む「甲子園で1勝」への道…偏差値68の進学校が智弁学園をコールド撃破? フツーの公立校でも勝てる「番狂わせの方程式」
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田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2026/02/03 11:03
昨春の奈良県大会では智弁学園に7回コールド勝ちの番狂わせを起こすと、夏もベスト8まで進出した畝傍。公立の進学校という環境下でいかにして強さを保っているのか
シーズンオフはウエートトレーニングで一から体を鍛えていく。基礎もさることながら、明らかに向上していったのは選手の自覚だった。それぞれが一つひとつのプレーを見直し、先輩、後輩関係なく選手間で意見を交わす。過程を信じ、もう秋のような失敗は繰り返さないのだと、自分たちに言い聞かす。
雀部が目を細める。
「上級生を中心に、秋の敗戦はメンタル的にもしんどかったなかで『もう1回やっていこう』と、結果が出るかわからないなかで自分たちを信じて練習してくれました」
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そうして報われたのが、昨年の春である。
3回戦で強豪の智弁学園を相手に、2回に一挙6点を奪うと4回にも2点を追加した。結果は8-1の7回コールド。ジャイアントキリングを果たしたのである。
大金星を通じて雀部が実感したこと。それこそが、秋に猛省した気の持ち方だった。
「序盤に大量点は入りましたけど『向こうは絶対にこのまま終わるわけないんやから、9回までしっかり戦って勝ち切るんや』とベンチで言い続けながら、コールドになる7回も『9回までやるからな』と言いましたし、あの子たちもしっかり戦ってくれました」
気持ちという精神論。野球は最後の1アウトを取られるまでわからない――今では使い古された格言においても、畝傍は柔軟に受け止める。だからこそ、夏も智弁学園戦での勝利がフロックではないと証明できた。
夏の奈良大会は「10年ぶりベスト8」の躍進
高田高校との3回戦は、3回までに0-5と劣勢を強いられていた。だが、前年秋に教訓を得たチームは「1点ずつ返していこう」と情勢を冷静に見つめる。4回に2点を返すと、6回には1点、7回には一挙5点を奪って逆転に成功し、10-6で相手を退けたのである。
夏は10年ぶりのベスト8。監督就任2年目での躍進に雀部も自信を覗かせる。
「この年はひと冬を越えて迎えた3月以降は、負けていても『ひっくり返せるんじゃないか』という気持ちで試合を見ていられました。それは、データとか分析といった予備知識を持って臨んでいることもそうでしょうけど、あの子たちが自信を持ってプレーできるようになったのが強みになったと思っています」

