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“高市早苗首相の母校”が挑む「甲子園で1勝」への道…偏差値68の進学校が智弁学園をコールド撃破? フツーの公立校でも勝てる「番狂わせの方程式」
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田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2026/02/03 11:03
昨春の奈良県大会では智弁学園に7回コールド勝ちの番狂わせを起こすと、夏もベスト8まで進出した畝傍。公立の進学校という環境下でいかにして強さを保っているのか
主将の日比克もそのひとりだ。
3歳上の姉が畝傍の吹奏楽部にいたこともあり、中学時代に何度か高校の試合を観戦したことがあった。それがきっかけで興味が湧き始めていたところ、選抜チームでともにプレーしていた高岸彰良から誘われたことで心が固まったという。
「奈良で強豪って、智弁(学園)と天理って言われてるじゃないですか。小学校の時は公立校ってどんなところがあるのかわからなかったんですけど、お姉ちゃんがいたことで試合を観に行ったら『実力があるんだな』って思って。ライバルだった高岸君にも誘ってもらえたんで『私立に勝って甲子園に行きたい』って想いが生まれました」
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日比が志を抱いた通り、畝傍は進学校ながら定期的に県で上位に進出する。
甲子園出場こそないものの、2007年にセンバツ21世紀枠の近畿推薦校となり、20年にも奈良県の推薦を受けたように県内では実力校のひとつだ。
今年3年生となる代は、26人いる部員のうち約半数が硬式出身者。多くが下級生から公式戦に出場しており経験値が高い。彼らは、雀部が野球部の監督となった24年に入学した、いわば1期生ということになる。
そのチームが昨年に強烈なインパクトを放つわけだが、実現には前段があった。
チームの転機となった「予想外の敗戦」
雀部が監督となった24年は、春は奈良大附属、夏は天理と初戦で強豪私学に敗戦した。新チームが始動した夏休みの後半に打線が湿りがちとなり、不安を残したまま迎えた秋の大会だったが、生駒高校との初戦では2回までに4点を取る好スタートを切った。
これがよくなかったと、雀部が振り返る。
「序盤に点が入ったことで、チームが『いける!』と盛り上がったまではよかったんですけど、そこから攻撃が単調になってしまい、終盤にひっくり返されて負けてしまいました。僕としても監督となって初めての年でしたし、同じ公立校と戦う以上は勝ちたかったこともありましたけど、『試合では一定の気持ちで戦わなアカンな』と痛感させられました」
勝てると思っていた試合で負ける。チームはそこで慢心があったと気付く。気落ちする選手たちを真正面に捉えながら、雀部は監督である自分も戒めるように「今までのことを見直してやっていこう」と告げた。

