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「バレーボールが嫌いになることもあった」“春高の申し子”水町泰杜(24歳)の原点…背負った者だけが知る「鎮西の3番」の重圧とは?
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byAFLO SPORT
posted2026/01/04 17:00
鎮西高校のエースとして春高バレーで活躍した水町泰杜(2020年1月撮影)。24歳となった現在はインドアとビーチの二刀流で活躍している
高校最後の1年。“止められた記憶”を脱するべく、鎮西は「エース勝負」からの脱却を目指した。ミドルブロッカーを絡めた攻撃を積極的に起用し、パターンを増やすために必死で練習した。夏のインターハイは初戦で東山高に敗れたが、それでも水町を中心に「やる」と決めたバレーボールに挑戦し続けた。
迎えた最後の春高バレー。ノーシードとなった鎮西は、初戦と2回戦は順当にストレート勝ちを収めたが、東北高との3回戦はフルセットまでもつれる接戦となった。連戦を重ね、疲労が蓄積している状況に加え、しかも続く準々決勝・駿台学園戦は3回戦と同日に行われるダブルヘッダーとあまりにも過酷な強行日程を強いられた。
だが、この試合で見せた水町の姿はエースそのものだった。
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互いに25対23でセットを奪い合って迎えた最後の第3セット。駿台学園にリードを許した鎮西は、20対23と“3点”を追う中で放った水町のサーブがネットにかかり、相手にマッチポイントを与えてしまう。全員攻撃を掲げながらも、鎮西のエースたる以上、絶体絶命の状況になれば攻撃の大半は水町に託される。跳び続け、打ち続けた身体はとっくに限界を超えていたが、それでもトスを呼び、打ち続ける。そんな姿に魅了された会場の観客や、中継で見守る人たちのほとんどが「水町に上げてくれ」と願っていた。
駿台学園のサーブから始まるラリーの1本目、鎮西は水町のバックアタックを選択。3枚ブロックに当たるも、再びトスはすでに助走に下がった水町へ。今度は2枚ブロックに阻まれるが、ボールは鎮西コートへ返り、3本目も水町に上がった。しかし、最後のバックアタックが駿台学園の3枚ブロックに阻まれて20対25――駿台学園に軍配が上がると、水町は頭を抱えて涙を流した。
ただ、そのシーンこそが「自分にしか見られない景色」だった、と回顧する。
「鎮西のエースはちょっと違う」
「2年の時は、いろいろしんどかったんです。でも3年生の時は周りも頑張ってくれて、最後、ああいう形で僕に預けてくれたのは嬉しかった。自分にしかできない経験、自分にしか見られない景色を見せてもらえました。
ブロックが来ているのはわかっていたんですけど、みんながめっちゃカバーしてくれているのもわかっていたし、見えていた。打ちながら、込み上げるものがあったのも覚えています。結局最後はブロックに止められて悔しかったんですけど、でもやりきったな、と思ったし、鎮西のエースをやれてよかったな、って。鎮西のエースって、他の高校のエースとはちょっと違う。やった人にしかわからないかもしれないけど、やっぱり特殊なんです。でもそういうポジション、鎮西のエースができたことはほんとによかったし、感謝しかなかった。だから最後は、打ち切りたかったんです」

