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「10年前のドネアだったら…」激闘王・堤聖也vs43歳ドネア死闘12ラウンドを英国人記者はどう見た?「ツツミは幸運だったと思う」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2025/12/20 06:00

「10年前のドネアだったら…」激闘王・堤聖也vs43歳ドネア死闘12ラウンドを英国人記者はどう見た?「ツツミは幸運だったと思う」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

ノニト・ドネアに判定勝ちを収め、2度目の防衛を果たしたWBA世界バンタム級王者・堤聖也

 中盤ラウンド以降、流れが変わった最大の要因はツツミの“若さ”だったように思う。最終的に年齢差が決め手になった。ツツミは29歳で、決して若手ではないが、まだ全盛期にある。劣勢になり、ポイントで後れを取って、コーナーから「ペースを上げていけ」と言われたとき、それに応えるものを持っていた。今のフィットネスなら、ツツミはおそらく15ラウンドでもしっかりしたペースで戦えるのではないか。

 一方、終盤のドネアはガス欠を起こした。はるかに年上である男はツツミのペースについていけなくなった。ドネアが落ちていったのに対し、ツツミは安定しており、おかげでポイント面でも巻き返していくことが可能になった。心身のコンディションがしっかりしているからできることであり、その点をツツミは誇るべきだろう。

ベストの選択肢は「タクマと再戦」

 ここで“レジェンド”の壁を突破したことで、ツツミはこの階級の中心選手として戦い続けることができる。現在、バンタム級の頂点は層が厚い。ツツミは強い相手に困ることはない。WBC王者タクマ・イノウエ(井上拓真)、WBO王者クリスチャン・メディナ、さらにはWBA休養王者アントニオ・バルガス、元IBF王者リョウスケ・ニシダ(西田凌佑)、そしてテンシン・ナスカワ(那須川天心)まで含め、挙がっている名前はどれも対戦相手として現実的だ。テンシンはタクマに負けたばかりだが、それでもビッグネームで、ツツミと対戦しても大きな試合になる。また、ツツミ自身が希望していた4階級制覇王者カズト・イオカ(井岡一翔)との対戦も素晴らしいマッチメイクだ。

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 これらの中でベストの選択肢を選ぶなら、私はタクマとの再戦だと思う。昨年10月の両者の第1戦は素晴らしい内容の打撃戦であり、そのリマッチがWBA、WBC統一戦という形で行われれば最善のシナリオだ。タクマにはテンシン撃破の勢いもあり、日本ボクシングにとっても巨大な試合となるのだろう。

 ただ、繰り返しになるが、今のバンタム級には実力とスター性がある選手が揃っており、どんな顔合わせでも興味深い。特にツツミは誰と対戦しても激しい試合をしてくれる選手であり、今後も注目し続けたいと私も考えている。〈つづき→後編〉

#2に続く
「なぜ堤聖也を仕留めなかったのか」英記者が43歳ドネアに疑問…蘇った6年前の井上尚弥戦、引退説に「ツツミ戦が最後であってほしい」

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