ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
「大丈夫と思わせてエグいパンチを…」堤聖也が語った43歳ドネアの“恐ろしさ”「中盤に鼻は折れていた」なぜ挽回できたのか? 激しすぎた防衛戦ウラ側
posted2025/12/18 17:30
鼻を折られながらノニト・ドネアに攻勢をかける堤聖也。レジェンドとの激闘にスプリット判定で勝利し、WBA世界バンタム級王座を防衛した
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Finito Yamaguchi
WBA世界バンタム級タイトルマッチが12月17日、両国国技館で行われ、チャンピオンの堤聖也(角海老宝石)が暫定王者ノニト・ドネア(フィリピン)を2-1判定で下し、2度目の防衛に成功した。堤は元5階級制覇王者のレジェンドとの接戦をいかにして制したのか。両者の思惑が激しく交錯した一戦を検証する。
「当たれば必倒」強烈だった43歳ドネアの圧力
御年43歳。将来の殿堂入りが確実視されるビッグネームが全盛期であるはずはなかった。ドネアの直近の試合は今年6月。2年ぶりのリングだった暫定王座決定戦は9回負傷判定勝ちで、無名選手相手に芳しい内容ではなかった。これについてドネアは「3週間しか準備期間がなかった」と弁解し、「しっかりトレーニングができた今回は段違いにコンディションがいい」と続けたが、「峠を過ぎたボクサー」という印象は変わらなかった。
こうした周囲の思い込みに対し、ドネア陣営が異を唱えるのは当然だろう。そしてまた有利を予想された堤も「ドネアは古豪」という見方を否定していた。
ADVERTISEMENT
「年をとってスタミナは落ちてもパンチ力は衰えない。それに今回のドネアは間違いなくモチベーションが高い。勝てば未来が拓け、日本でもうひと稼ぎできるから」
ドネアの言葉が単なる強がりではなく、堤の予想が的を射ていたことは試合が始まるとすぐにわかった。
立ち上がり、左ガードを下げ、アップライトに構えるドネアが堤にプレッシャーをかけた。思いのほか動きがよく、キレも感じさせる。「打つぞ」とフェイントを使いながら堤に迫る圧力が強烈だ。多彩なジャブ、カウンターで合わせる右、伝家の宝刀である返しの左フックは鋭く、当たれば必倒と感じさせた。
堤の立ち上がりも決して悪くはなかった。ドネアのカウンターをもらわないように踏み込み過ぎず、冷静なスタートを切ったように見えた。本人は「ドネアのパンチは強いけど見えているし、反応できている。OK」と手ごたえを感じていた。


