第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
「強い相手を倒すのが好き」2年前の涙を乗り越え、國學院大學のキーマンに成長した野中恒亨が虎視眈々と狙う区間新記録
posted2025/12/25 10:01
出雲駅伝3区で区間2位など、今季のレースで実力を証明し続けている野中恒亨
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Shiro Miyake
一抹の不安に包まれた秋の霧は晴れたようだ。シーズン前から目標に掲げる初の総合優勝に向け、國學院大學は意気揚々としている。10月の出雲駅伝で2連覇を達成したが、11月2日の全日本大学駅伝では不完全燃焼の4位。持てる力を存分に発揮できず、伊勢神宮で肩を落としていた主力らはすっかり気持ちを切り替えている。チームのまとめ役を担う上原琉翔(4年)は、堂々と胸を張っていた。
「箱根駅伝に向けて、良い流れがつくれています。全日本大学駅伝で悔しい思いをした選手たちも、その後のレースで気持ちを見せ、結果でも示しているので。いまチームには『やってやるぞ』という雰囲気が漂っています」
主将を担う上原は本番だけに照準を合わせて調整しているが、同学年の青木瑠郁は11月16日の上尾シティハーフマラソンで駒澤大学の桑田駿介(2年)に競り勝ち、復調を印象づける優勝を果たした。1時間00分45秒と自己ベストを更新するなど、全日本大学駅伝の7区で区間9位と苦しんだのが嘘のようである。前田康弘監督から「青木瑠郁はこんなもんじゃないというところを見せてくれ」とハッパをかけられ、期待に応えてみせた。1年生から学生三大駅伝をすべて走ってきたエース格の21歳は、凛とした表情ではっきり言う。
「上尾(シティハーフマラソン)でチームに流れをもう一度持ってくるのが、僕の役割でした」
それから6日後。頼もしい先輩に負けじと、勢いをつけたのは3年生の野中恒亨だ。11月22日、八王子ロングディスタンスの10000mで日本人学生歴代6位の27分36秒64をマークし、國學院大の強さをあらためてアピールした。実業団選手たちと互角以上に渡り合ったレース内容も目を引くものだった。昨季まで國學院大のエースとして活躍したOBの平林清澄(現・ロジスティード)もラストで振り切り、組1着でフィニッシュ。「全日本大学駅伝で一度落ち込んだ、全体の士気を上げる」と意気込んでいた言葉どおりの力走である。その存在感は増すばかりだ。
レースで得た自信と課題
今季は出雲駅伝の3区でも、城西大学のヴィクター・キムタイ(3年)に1秒差に迫る区間2位と奮闘。全日本大学駅伝でもケニア人留学生らがエントリーする3区を志願し、区間賞を獲得している。エース格が集まる区間で実力を証明し、自らの走力を確認できた。
「留学生とも、他大学のエースたちとも戦える」
それでも、駅伝で求められているタスクを100%で果たせたわけではなかった。5人を抜いて1位の駒澤大に1秒差と迫ってもなお、ゲームチェンジャーとしては物足りなさを覚えた。
「前田さんに与えられた役割は、僕の区間で先頭に立つことでしたから」
今後の課題はしっかり分析できている。終盤の追い上げだけではなく、中間走(中盤の走り)でもっとペースアップしなければいけなかった。ただ、ピーキングを11月に合わせていなかったのも事実。
「伸びしろはまだあります。可能性を残していますので。箱根駅伝では、もっと行けると思います」


