All in the Next ChapterBACK NUMBER
西岡剛「最初は断った」ロッテ打撃コーチ就任の舞台ウラ「選手にお金を稼がせることしか考えてない」新生マリーンズ改革の救世主になるか
text by

田中大貴Daiki Tanaka
photograph byWataru Sato/Tamon Matsuzono
posted2025/11/30 11:02
日本一に輝いた2010年以来、ロッテのユニフォームを身にまとう西岡剛。かつてのリードオフマンが、新生マリーンズの改革の一手を担う
西岡 全員、眠ってる。プロまでたどり着いた選手たちなので当然ポテンシャルはある。ただ、すぐ(指導と)マッチする人と、時間がかかる選手が分かれた印象。でも我慢強く向き合うことが大切です。
――適応できた選手はいた?
西岡 すぐパッとできたのは小川(龍成)君。あと友杉(篤輝)君もコツを掴みそうな雰囲気はあった。吸収力は高い。逆に、身体の使い方に少しぎこちなさを感じたのは藤原君。
ADVERTISEMENT
――ぎこちない?
西岡 藤原君にはストレートに言いました。昨シーズンは打率.271。今のままならMAXの成績はここだということに気づいてほしい。その先はないよ、と。伸びしろはまだあるということですね。あと、打ち方に少し癖があった上田(希由翔)君はもうちょっとつきっきりで見たい。高部君は全部100%でバチンと振って勝負するタイプで。僕は基本、試合で全力で振ったことなんてほとんどない。(長所を消さずに)どうやって無駄な部分を省いていくか。すごく難しい作業。でも、みんなもっと良くなりますよ。
――現役時代の西岡さんは当時コーチの高橋慶彦さんによくバットを振らされていました。そういった経験は指導に生かされますか?
西岡 もちろん。でも、よく慶彦さんの影響を、と言われてますが、それだけかと言われたらそうじゃない。慶彦さんに教わっていいと思ったことは取り入れていますし、金森(栄治)さんの理論でいいと思うところもミックスさせている。今まで携わってもらった人、それこそMLBで一緒だったコーチもそう。小学校、中学校、高校で教わったことも含めて「継承」していきたい。伝えた選手がいつかは引退してコーチになっていく。継承していく役目として全うしたい。
厳しい練習を課した理由
――秋季キャンプではハードな練習も課していましたね。
西岡 連ティー(連続ティーバッティング)を1000球ぐらい。「そんなんでバットの振りのキレが良くなったりするのか」という声もありましたが、そんなことはわかりきってる。これがシーズン通してやる練習だとは思ってない。ただ、「量」の限界を超えた時に「質」が生まれる瞬間はあるんですよね。選手一人一人に話したことですが、しんどくなってだんだんバットを振れなくなったとき、肘の位置はどこにあったか。みんな身体と肘がくっついている。じつはその形が理想。きついけど「なるほど、これでいいのか」と気づいてもらう。納得できる順序は踏んでいるので。
――体感してもらって、言語化できるところまでもっていく。
西岡 プロの世界で一番大事なのは修正能力です。崩れた時に戻せるか。崩れる時間が短ければ3割に届く。肘の位置、バットの位置、目線。ジャストミートするポイントだけを見るのではなく、どうバットを持っていくか過程が大事。その作業をロジカルに考えられないと、何度もスロー映像を見返しても打開策は見つけられない。
――なるほど。
西岡 野球においてバッターは受け身。始動は必ずピッチャーからですよね。バッターはどれだけ待てるか。これをやっていると、夏場になると(タメをつくる)軸足の内転筋がキツくなるんですよ。
――我慢できなくなると、打席でぐらつき、重心が前にいく。
西岡 どうしても(腕を伸ばして振る)楽なバッティングが増えてきます。ならば、内転筋を鍛えましょう、必要なトレーニングをやっていきましょう、となる。言語化できるとやるべきことが目の前に出てくるものです。ピッチャーがどんどん進化している理由はわかりますか? 球速を上げたい。回転数を上げたい。じゃあ必要な筋力は? 明確だから、いきなり3キロ、4キロも上がるピッチャーが出てくる。バッターだって同じ。それが僕の中には明確にある。これだけのオファーをいただいたので、今、自分の脳みそにあるものはすべて球団に預けようと思っています。


