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「ワルぶってもバレる。嘘がつけないタイプなんだよ(笑)」人気レスラー・上谷沙弥の“カリスマ性”の正体…『鬼レンチャン』『ラヴィット!』反響後の今
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/11/20 17:00
上谷沙弥が語る『鬼レンチャン』300m走サバイバルで成長した部分とは?
上谷の一般メディアでのキャッチフレーズは“令和の極悪女王”。しかし発言はあくまで率直で、ことさらに“悪役ぶり”を見せようとはしていない。「私はもうベビーフェイスとかヒールとかを超越したと思ってるから」と上谷。テレビでも度々涙を見せて「ヒールらしくない」と言われることもある。何より大事にしているのは自分らしくあることだ。
「無理にワルぶってもバレるからね。私は嘘がつけないタイプなんだよ(笑)。自分の感情とまっすぐ向き合って、それをさらけ出すからファンにも相手にも伝わるんだと思うよ」
激闘の末に勝利した渡辺桃は、デビュー戦の相手でもあった。大舞台で先輩に勝ち、上谷はここでも涙を見せている。
プロレスラー上谷沙弥はどう変わったのか?
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試合後は朱里と安納サオリがリングに上がり上谷に対戦要求。2人に挟まれた上谷は「沙弥様、人気者だなぁ!」と高笑いしてみせた。安納とは12月29日のスターダム両国国技館大会で赤いベルトの防衛戦。さらに1月4日、新日本プロレスの東京ドーム大会では朱里のIWGP女子王座と上谷のSTRONG女子王座のダブルタイトルマッチが決まった。
年をまたいではいるものの“中5日”での連続タイトルマッチ。しかも舞台は両国とドーム。こうしたところからも、今の上谷の存在がいかに大きいかが分かる。
朱里に対しては「東京ドームという最高の舞台で、女子プロレスを象徴する試合ができる」と語った。渡辺桃に対する態度と同じで、信頼している相手にはそれを隠さない。
だが安納に対しては手厳しい。
「最近、存在感なくない? 息してる? フリーの時のほうが存在感あったよね。(同じユニットだった)中野たむがいなくなったのに、遠慮してんのかな」
このところ目立った動きがない安納の“痛いところ”をズバッと突いてきた。嘘をつかず、思うことをそのまま言っているから言葉も鋭くなる。
以前はそうではなかった。激しい試合ぶりと裏腹に、負けたり言動が物議を醸して落ち込む姿が印象に残る選手だった。そこが感情移入を誘っていたとも言える。
「まあ、今も落ち込む時はあるけどね。でも、そこで終わりじゃないのが今の沙弥様だから。何を言われてもやられても、絶対に立ち上がるしやり返す。それがプロレスラーだからね。そういう意味では、前よりプロレスラーらしくなったのかな。
それは、もともと自分の中にあった“怒り”を表に出せるようになったってこと。もしかしたら、それも中野たむから受け継いだものかもしれない」
感情移入を誘う存在から「立ち上がってやり返す」姿で憧れられる存在になったのだ。それを“カリスマ性”がついてきたと言い換えてもいいだろう。


