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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「昔は走り方がどんくさくて…」阪神ドラ1立石正広の姉が語る“バレーボール一家”の末っ子がプロ野球選手になるまで「ドラフト前夜に届いたLINE」
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuka Tateishi
posted2025/11/05 11:02
歳の離れた二人の姉に可愛がられて育ったという立石正広(一番下)。家族もドラフト指名を喜んだ
今年6月9日、東京ドームで行われた全日本大学選手権1回戦。正広が主将を務めた創価大は東亜大と対戦した。0対0のまま決着がつかず、タイブレークに突入。しかし、延長10回に創価大はなんと大量11失点。衝撃的な敗戦だったこと以上に、弟がグラウンドで人目をはばからずに号泣していたことに驚いた。
「負けて泣いている姿を初めて見ました。あんまりそういう感情を表に出さない子だったので、地元である山口県の大学と当たって、しかもああいう負け方だったから相当悔しかったんだなって。その顔を見ただけで、こっちももらい泣きしそうになりました」
「緊張するね」「静かに待ちます」
夢だった“プロ”の道が現実に近づいた弟は多忙を極めていった。優華も半年以上続く長いリーグ戦をこなすバレーボール選手。3人姉弟が顔をそろえることは数えるほどしかなくなったが、優華は時間が合えば親戚を交えて正広を食事に誘い出した。
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「焼き鳥とかステーキとか、筋力をつけたいから肉がいいって言うんです。バレーボールは遠征が多いのでよくおみやげを買って送ってあげるんですが、小さい頃の感覚でお菓子を送ろうとしたら『そういうのはいらないから。ご飯のお供になるものとか、栄養があるものがほしい』って。同じアスリートとしてすごいな、意識しているんだなと感心してます。でもこの前、韓国遠征のお土産にパックが欲しいという姉に便乗した正広が『俺も』と珍しく欲しがったんです。パックした写真を送ってきました(笑)」
普段から仲良しな立石姉弟。ドラフト前夜も、優華は正広にメッセージを送っている。
「緊張するね」
普段は返事が遅い弟からすぐに返信が来た。
「静かに待ちます」
その文面を見て、優華は弟の運命を決めるドラフトがやってくることを実感していた。〈後編に続く〉



