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悪のプロレスラーがテレビで大活躍…何が上谷沙弥を“変えた”のか?「中野たむ。それしかない」“ヒールだけどいい人”説には反論「意外と怖いよ」
text by

原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/10/31 17:40
スターダムの赤いベルトと新日本プロレスのSTRONG女子王座のベルトを保持する上谷沙弥。東京ドームでの興行をぶち上げ、プロレス大賞MVP獲りに走る
「中野たむ。それしかない」上谷沙弥を強くしたもの
意外と怖い、というところに“らしさ”が感じられる。そして「もともと酒が好きだ」と上谷は言う。
「でもコンディションを整えなくちゃいけないから、お酒は月一の楽しみかな。居酒屋さんやご飯屋さん行って、ピーチウーロンや梅酒を飲む。自分のペースで。大人の飲み方だよ。これがめっちゃ気分転換になるんだ。『よし、頑張ろう』ってなれる。今の一番の楽しみだな。ご飯はたまに自炊、たまに外食、たまにウーバー? いや、最近はウーバーが多いかな。沙弥様は忙しいからな」
何がここまで、上谷を成長させたのか?
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「中野たむ。それしかない。中野たむが気づかせてくれたことがいっぱいあった。私は自分のために頑張るより、誰かのために頑張るほうが動けるタイプ。それは敗者引退マッチで、中野たむのすべてを奪って気づいたこと。それまでは自分の目標でベルトが巻きたいとか、いろいろあったけれど、それには限界があって……。赤いベルトを巻いてから、たくさんの人にプロレスを知ってもらいたい。お客さんのために、って意識しだして、それが私自身を強くしてくれた」
自ら引導を渡した中野への思いは深い。
「中野たむが引退して、中野たむのすべてを背負って私はプロレス人生を歩まなくちゃいけない、って。中野たむのためにも夢をかなえていくんだ。私自身、自分のためより、人のためにというのが、こんなに心を動かしてくれて、背中を押してくれた。心の底からそう思った」
上谷は自分に言い聞かせるように、そう語った。
もちろん、ぶち上げている“プロレス大賞MVP獲り計画”も着々と進んでいる。
「審査員は沙弥様のしもべになれよ!」


