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「わずか1年で退団…」身長192cm大型セッター永露元稀“電撃移籍の真相”「成長できる場所が広島サンダーズでした」背景に“ある人物”の助言
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2025/10/24 11:01
SVリーグ開幕会見で広島サンダーズの代表として登壇した日本代表・永露元稀(右)。開幕戦は古巣でもあるウルフドッグス名古屋と対戦する
「永露のゴールは代表チームでプレーすること。そのことをジェスキーに聞きました。彼は未完成で、トスワークに関しての経験も足りない。でも、もっと試合の中で学び、スキルを磨けばまだまだ伸びる。ブルテオンにブリザールが加入すると知った時、彼が描くゴールのためにはセカンドセッターとしているよりもファーストセッターとして経験を積むほうが彼のキャリアにとっていいものになると思いました。だから私は永露に『広島へ来ないか』とプッシュしたんです。そして、そのプッシュを後押ししてくれたのがジェスキーでした」
永露もまた、プライベートでも仲良くしてきたというジェスキーから「あの人は間違いない」とウェベル監督に対する評価を聞いていた。実際、永露とウェベル監督はシーズンの途中に直接話をする機会も得ていた。
「まず、バレーボールに対して熱いのはもちろんですけど、僕のクセや課題など、改善できればもっとよくなるところをとても具体的に話してくれた。相手チームの監督なのに、こんなに僕のことを細かく見て分析してくれていたんだ、と伝わってきました。シーズン中もZoomで話す機会をつくって、僕に対するアドバイスもくれた。そのこと自体にも救われましたし、トーマスもハビさんのことをリスペクトしているので、何度も『あの人の指導で成長できるし、人間的にも素晴らしい』と勧めてくれた。去年、金子を見て、うまくなったな、と思うこともあったので、僕も成長するためにはこの人に教えてほしい、と。広島へ行って、ハビさんのもとでやろうと決めました」
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当時のやり取りを回想しながらウェベル監督も笑みを浮かべた後、「それでも」と語気を強める。
「最終的にここ(広島)でやろうと決めたのは永露です。その決断に、覚悟があることを私は知っている。きっと、やってくれるはずです」
「広島で結果を求め続けたい」
前述の通り、今季のサンダーズは奇しくも同郷の先輩・後輩がライバルとしてセッターのポジションを争う。筑波大で主将を務めた阿部も加えた3人が火花を散らすことをウェベル監督は歓迎する。ただ、「みんな素晴らしいセッター」と称しながらも「現段階では一歩リードしている」と永露への信頼を口にする。
9月の世界選手権は予選敗退に終わった。「悔しさを絶対に晴らしたい」と次を見据える永露は、その第一歩となる新シーズンに向けて、広島でスタートを切った。
「僕はまだまだセッターとしてのキャリアが浅いので、ハビさんのもとで考え方や技術、学べることはすべて学んで成長したい。自分自身はもちろんですけど、バレー界を盛り上げるためにも広島で、結果を求め続けていきたいです」
覚悟のシーズンが幕を開ける。


