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ボクシング界の危機「リング事故を防げるのか?」検証委員会がJBCに「再発防止策は不十分」帝拳ジムは独自プロジェクトで“決意”「救急専門医を配備」 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2025/10/19 17:01

ボクシング界の危機「リング事故を防げるのか?」検証委員会がJBCに「再発防止策は不十分」帝拳ジムは独自プロジェクトで“決意”「救急専門医を配備」<Number Web> photograph by Mikio Nakai/AFLO

8月に2人の選手が亡くなるリング事故が発生した後楽園ホール。JBCが再発防止に向けて奔走するなか、帝拳ジムは独自のプロジェクトを立ち上げた

 選手を担架に乗せてからも詳細な取り決めが必要になる。

「最も試合数の多い後楽園ホールは構造上、選手の搬送に時間がかかってしまいます。そこで明らかに急性硬膜下血種が疑われる場合は医務室へ運ばず(遠回りになる)、リングからそのままエレベーターに運んで会場のある5階から1階まで下ろす。そういったケースも想定して、緊急時対応マニュアルを作成中です。現在は緊急事態に関わるすべての関係者が救急救命士の講習を受けています」

 事故に見舞われた選手をいかにスムーズに病院に搬送するかは喫緊の課題だ。現在は慈恵医大をメインに牧田総合病院とも連携しているが、これだけでは足りない。さらに救急医療の受け入れ先が縮小傾向にあるという社会情勢の中、安河内本部事務局長は「今、病院との連携関係を構築しています。10くらいの病院との連携を目指しています」と受け入れ病院の確保に意気込みを示した。

帝拳ジムが独自プロジェクトで示した“決意”

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 JBCのこうした対応に先駆け、帝拳ジムは10月、独自に「帝拳セーフボクシング・プロジェクト」を発足させた。同ジムは事故が起きた8月2日の興行主催者であり、これを受けて9月6日に予定した主催興行『DYNAMIC GLOVE on U-NEXT』を延期。安全管理体制を整えて10月4日、後楽園ホールのイベントで新体制をスタートさせたのだ。

 その内容は、後楽園ホールに近い日本医科大学と連携し、同大学付属病院高度救命救急センターと主催興行スケジュールを共有、救急専門医と救急救命士が待機するドクターカーが会場に常駐し、緊急事態が起きたときに対応する、というものだ。同センターは1977年に日本初の救命救急センターとして開設され、長くこの分野で社会に貢献してきた。4日の興行では救急専門医1人、救急救命士2人がリングサイドで試合を見守った。

 選手に異変が起きた際はリングドクターが直通電話(ホットライン)で同センターに連絡する。同センターの医師が選手の状態を確認し、必要であればドクターカーで病院に搬送、速やかに治療を受けることができる。また同ジムでは所属選手の健康管理、ジム内での事故にもホットラインを活用するとしている。

【次ページ】 「当日体重」次第で階級変更を義務付ける可能性も

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