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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
ボクシング界の危機「リング事故を防げるのか?」検証委員会がJBCに「再発防止策は不十分」帝拳ジムは独自プロジェクトで“決意”「救急専門医を配備」
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byMikio Nakai/AFLO
posted2025/10/19 17:01
8月に2人の選手が亡くなるリング事故が発生した後楽園ホール。JBCが再発防止に向けて奔走するなか、帝拳ジムは独自のプロジェクトを立ち上げた
帝拳ジムのプロジェクト発足は「まず自分たちができることを一刻も早くやる」という決意の表れだろう。今後は日本プロボクシング協会と連携しながら、都心部のすべての興行にプロジェクトを拡大していくことを目標に掲げている。
「当日体重」次第で階級変更を義務付ける可能性も
JBCに話を戻そう。JBCでは試合時の対応とともに、試合前の対策も改善の対象にしている。その一つがCT検査よりも細かいところまで分かるMRI検査の導入だ。選手たちはMRI検査をプロテスト合格時、さらにA級(8回戦以上の試合ができる)昇格時に受ける。もし試合で何かあったとき、正常時のMRI検査と照合できるというCT検査ではできないメリットがある。A級昇格時にも検査するのはA級の試合で事故が多いからだ。今のところ来年のライセンス更新時からスタートを見込んでいる。
水抜き減量に関しては急性硬膜下血種との明確な因果関係は明らかにされていないが、JBCではまず「どのようなやり方であっても健康に悪影響を及ぼす」という認識を広めていく方針だ。前日計量から当日計量までの体重増を調べ、一定の割合以上増えた選手には階級変更を義務付ける方向性も示されている。
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また、奈良県立医科大学臨床研究センターと協力し、これまでの試合データ(勝敗、採点、体重、当日体重、何ラウンドにダウンしたかなど)を解析するという取り組みにも着手するとしている。
かつて15回戦制だった世界タイトルマッチは12回戦制となり、6オンスだったグローブは8オンスになった(軽量級)。これが安全対策にどれだけ寄与したかは明確ではないが、時代とともにボクシングのテクニックや、選手を取り巻く環境が変わってきているのは間違いない。固定観念にとらわれず、常に安全対策をアップデートしていくことが求められている。
<前編とあわせてお読みください>
