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大阪桐蔭が2年ぶりの秋大阪大会制覇…“楽しむ→愉しむ”への変化の意味は?「しぶとい」常勝軍団は帰ってきたか「ここはひとつの通過点なので」
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沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2025/10/15 11:02
秋季大阪大会を2年ぶりに制した大阪桐蔭ナイン。かつての「常勝軍団」は甲子園に戻ってこられるだろうか?
経験値は浅いチームではあるが「まずは色んな経験を積むことが大事」と西谷監督が言うように、まずは秋の大阪大会7試合で経験値を上げることはできた。
ちなみに黒川は、前主将の中野から「愉しめ」という言葉を託されていた。
「楽しめ、ではなく敢えて難しい漢字の“愉しめ”というのは、深い意味で愉しめよ、という意味らしいです。でも……大阪で勝ち切れたのは大きいんですけれど、中野さんが言う“愉しめ”てるかと言われれば、まだまだなのかなと」
優勝でも…「ひとつの通過点」
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それでもひとつの“関門”は突破することができた。センバツへの道は近畿大会での戦いに左右される。
「大阪大会優勝はひとつの通過点。ここからが大事ですし、大阪で勝ち切って気が緩んでしまったら意味がないので」
優勝してもナインは控えめに勝利を喜んだ。
西谷監督は「成功も失敗もひとつの経験になる」と秋を制した選手たちを穏やかな表情で見つめたが、胸の奥につっかえたままの思いも吐露する。
「やっぱり、今年は一度も行けなかったのでね。その思いは選手みんな強く持っていると思います」
指揮官の今年抱いた無念さが”一度も行けなかった“という言葉のトーンの低さに込められているようにも聞こえた。
同じ轍は踏まない。しぶとく粘り強い戦いで誰よりも愉しみ、悔しさを経験したからこそさらに強くなった大阪桐蔭を、体現する秋にする。

