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渦巻く批判が一変の160キロ復活…佐々木朗希リリーフで秘密兵器化のナゼ「68→95%」「じつは1球種封印」ドジャース先発時と比較
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2025/10/04 11:00
長期離脱を強いられた佐々木朗希だが、ドジャース1年目はポストシーズンのクローザーという立場でV字回復のドラマを描いている
4月に入ってやや制球が良くなり、12日のカブス戦は負け投手になったものの5回を投げ自責点1、次のレンジャーズ戦は初めてQS(クオリティスタート=6回以上投げて自責点3以下)を記録した。
このまま調子を上げていくかと思えたが、5月3日のブレーブス戦は勝ちこそついたものの6被安打1被本塁打、9日のダイヤモンドバックス戦は5被安打2被本塁打、そして三振は一つも奪えなかった。
100マイル超は1球だけ、スプリットも遅くなった
佐々木の先発登板をMLB公式サイト「Baseball Savant」の球種別のデータで見るとこうなる。
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フォーシーム(299-204/68.2%)空13
最速161.7km/h 平均球速154.5km/h 平均回転数2080rph
スプリッター(196-98/50.0%)空26
平均球速136.5km/h 平均回転数482rph
スライダー(101-47/46.5%)空9
平均球速133.6km/h 回転数1889rph
カブスとの開幕戦、鈴木に161.7km/hのフォーシームを投げたが、100マイル(約160.9km/h)超のボールはこの1球だけ。あとは150km/h台半ばに終始した。ストライクが取れるボールがフォーシームだけだったために、ゾーンに投げ込むことに汲々としていた印象だ。佐々木のフォーシームはややシュートしているが、球速のわりに回転数が2050前後と低いこともありホップした印象はなく、打者には捉えられやすい。ちなみに今季の大谷翔平のフォーシームは160km/h超で2400回転に達している。
佐々木はNPB時代、スプリット(フォーク)がマネーピッチで三振の山を築いていた。
フォークの制球が良いことが最大の売りだったが、MLBではストライクが入らず、打者に見送られることが多かった。ワンバウンドは14球、死球は3つ与えていて、相手打者は「手を出さない」ことが基本になっていた。
ロッテ在籍時、フォークは140km/h以上出ていたが、MLBでは130km/h台半ば。思い切って腕を振っていないからではないかと思われた。
少ない3球種、マイナーでも苦難の道だったが
そしてスライダーである。もともと得意な球とは言えなかったが、球種が極端に少ない中で間に合わせ的に投げている印象だった。
ちなみに山本由伸、ダルビッシュ有、大谷が投げ分ける球種は以下の通り。
〈山本由伸=7球種〉
フォーシーム、スプリット、カーブ、シンカー、シュート、カットボール、スライダー
〈ダルビッシュ有=8球種〉
スライダー、フォーシーム、シンキング・ファストボール、スイーパー、スプリッター、カーブ、ナックルカーブ、カットボール
〈大谷翔平=7球種〉
スイーパー、フォーシーム、カットボール、スプリット、シンカー、カーブ、スライダー
わずか3つという佐々木の球種の少なさは、MLBではマイナスの意味で目立っていた。

