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「衰えてるどころか、むしろ…」タパレスが見た井上尚弥の"完璧な準備"「KOではなく判定勝ちだよ」じつは“直前スパー”で予言していた衝撃の12R
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/09/22 11:08
アフマダリエフを前に気合いを入れる井上尚弥。この後、完璧な12ラウンドが披露される
強打に定評がある井上のような選手の連続KOが止まると通常、ファンは落胆するもの。今回の“モンスター”に関しては、そうではなかったのも特筆すべき現象といえよう。その引き出しの多さは実際に圧巻であり、驚嘆しているのは海外の関係者も同じだ。
元ESPN.comの著名ライター、ダン・レイフィール記者が「アフマダリエフがあそこまで簡単にやられてしまったことにはショックを受けた」と井上が披露したマスターピースに舌を巻いていたことは象徴的に思えた。
タパレスの予言「真実を知ることになる」
「誰が衰えたって!?」
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32歳になった“モンスター”が試合後、リング上から観衆にそう問いかけたシーンも実に興味深かった。その言葉が向けられた先にはファンだけではなく、私たちメディアもいたのだろう。実際に現在の力量を測るリトマス紙的な一戦と目された強敵との対戦で、井上はわかりやすい答えを見せてくれた。そして、スパーリングパートナーとなったタパレスは、“衰えている”どころか、“以前より強くなっている”と戦前から証言していたことは付け加えておきたい。
「イノウエの力が落ちているなんてことはないと確信している。人々はMJの試合で答えを見ることになるよ。そこでみんな、真実を知ることになる。正直、イノウエは衰えているどころか、より良いボクサーになっていると思う」
井上尚弥の練習相手として来日したマーロン・タパレス。自身のInstagram(@officialmarlontapales)に感謝を思いを投稿した
“強者は強者を知る”というが、井上の真価をさまざまな形で言い当てたタパレスはやはり2階級制覇王者に相応しい実力者なのだろう。
その言葉通り、まだ向上しているのだとすれば、井上はいったいどこまで強くなるのか。長いキャリアの終盤に差し掛かっているはずの“モンスター”の今後が、アフマダリエフ戦のあとでますます楽しみになったファンは世界中に数多く存在するに違いない。

