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「井上尚弥のパンチでも倒れない」“真っ向勝負”を挑んだアフマダリエフ30歳とは何者だったのか? 壮絶な12ラウンドを支えた母国愛
posted2025/09/15 11:05
激闘の12ラウンドを終えて、井上尚弥(左)と笑顔で抱き合ったムロジョン・アフマダリエフ
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Naoki Fukuda
「自分は“最強”でも“最速”でもない。だが、私は“総合力”で勝負できる」
スーパーバンタム級4団体王者・井上尚弥との一戦を前に、ムロジョン・アフマダリエフは自身の強みをこう表現した。前人未到の領域に到達するモンスターを前にしながらも簡単には屈しない。静かな口調からは確かな自信を感じさせた。
「パンチを受けても耐えられるし、打ち合いもできる。身体の強さもある。アマチュア時代から積み上げた経験や、厳しい環境で培った精神力がある。だから自分を特定の要素でNo.1とは言わないが、“全部を高いレベルでこなせる”ことが私の強みだと考えている」
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リオ五輪銅メダル、2015年の世界選手権銀メダルなどアマで豊富な実績を積んだウズベキスタン出身の30歳は、プロでも14勝(12KO)1敗の戦績を誇っていた。2年前にマーロン・タパレスに敗れなければ、もっと早くに対戦が実現していただろう。自身と同門であるカルデナスが井上から奪ったダウンにも特別な意味を感じていないと明かした。
「イノウエは下の階級からクラスを上げながら、常に最前線で結果を残してきた。歴史上、同じように階級を超えて挑んだ名選手は多くいるが、イノウエも間違いなくその一人だ。もちろんマニー・パッキャオのようにもっと多くの階級を制覇した例もあり、イノウエはフェザー級が限界だという声も出ているのかもしれない。たとえそうだとしても、イノウエは2階級で4団体統一を成し遂げたという事実に変わりはない。これは歴史に残る偉業だ」
強烈パンチを浴びても倒れない
結果、判定負けを喫したが、12ラウンドまで戦い抜いた。その粘り強さの根底にあるのは、母国への忠誠心だった。
「アメリカの人たちには、派手なものなどまったく存在しない私たちの母国での生活は想像もできないだろう。毎日、食べるため、飲むために一緒に戦ってきた。ボクシングはそんな私たちにぴったりのスポーツだった。苦しい生活の中で育ったからこそ、互いを家族のように思い、団結が生まれた。それが“ウズベク・パワー”なんだ」
アフマダリエフが語る“ウズベク・パワー”の正体とは。なぜ井上尚弥を前にしても、果敢に立ち向かえたのか——その続きは、本編で描かれている。〈つづく〉
この文章の本編は、以下のリンクからお読みいただけます。
