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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「112球目のカットボールは失投だったのか」山本由伸"ノーヒッター未遂"真相…現地記者が見た悪夢の9回裏「この日の山本はほぼ完璧だった」
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byAP/AFLO
posted2025/09/13 11:09
ノーヒッター達成目前でホームランを浴びたドジャース山本由伸(27歳)。語り継がれる名勝負となった
その後に起こったことはベースボールファンならご存知の通りである。
9回2死、山本がカウント2-1から投じた112球目のカッターをオリオールズの1番打者ジャクソン・ホリデーのバットが捉えた。美しい放物線を描いた打球は右翼フェンスをギリギリで越え、土壇場で一矢を報いるソロホームランに。オールスター選出7度のマット・ホリデーの息子であり、赤い頬が特徴的な21歳のホリデーは自軍ダグアウトに戻ると喜色満面で同僚たちとハイタッチを交わした。
山本のノーヒッターへの挑戦は儚く終わった。ドジャースのベンチでは大谷翔平が呆然としていた。瞬間、一部のオリオールズファンはもちろん歓声を上げたが、それ以上にため息とどよめきの入り混じった声が漏れたのが印象的だった。
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「最後は僕が選んだ球だった。いいコースには行っていましたけど、カットボールにタイミングが合ってしまった。凄く悔しかったです」
ホリデーの読みを褒めるべき?
ここでの配球に疑問を呈したファンがいたのも理解はできる。初球は内角を狙った速球が真ん中近くに行き、ホリデーが強振してファウル。2、3球目はいずれも外のスプリット、4シームを見逃してのボール。カウント2-1となって迎えた4球目、山本が投じたカッターは果たして正しかったのか。インコースの球を思い切って振り抜いたホリデーのスイングを見る限り、外に2シーム、スプリットなどを投げていたら凡打、空振り、ファウルで終わっていた可能性が高かったのだろう。
もっとも、それも結果論。ドジャースのベン・ロートベット捕手が後に残した説明は納得できるものではあった。
「外角が続いて2-1のカウントになり、内角を攻める場面だった。(山本が)カッターを選んだのはいい選択だったと思う。自信を持っていたし、狙ったところにも投げられていた。完璧に捉えられたわけじゃないけど、十分にバットに当てられてスタンドに運ばれた、というだけだ」
疲れもあってキレは落ちていたが、山本、ロートベッドの言葉通り失投には思えなかった。ホリデーの土壇場での読みと振り抜きを褒めるしかない。ドジャースのエースが自信を持って投げた球を若きスター候補が打ち返した好勝負であり、試合後の山本は打たれた悔恨こそ語ったが、球種選択への後悔は感じられなかった。
この一球を最後に山本はマウンドを降りるが、このあとドジャースに悲劇が襲う。〈後編に続く〉



