甲子園の風BACK NUMBER
広陵“じつは取材統制あった”異例の復帰戦ウラ側「抗議する記者も…誰が質問を制限した?」現地記者は見た…中井哲之を継いだ“34歳監督”は険しい表情
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井上幸太Kota Inoue
photograph byKota Inoue
posted2025/09/01 06:01
甲子園辞退から新チーム初戦を迎えた広陵。現地記者が見たウラ側
「選手たちには、どなたからも応援してもらえるような野球を目指そうと常々言っています。試合の中でも全力疾走だったりだとか、守備に就く一歩目からダッシュでいこうとか、そういう声かけをさせていただきました。そういう姿が(観る人に)届いていれば嬉しいと思います」
かつてないほどチームが揺れる中で新主将に就任したのが、曽根丈一郎だ。前チームから「2番・二塁手」として出場、小学生時代は広島東洋カープジュニア、中学でもUー15日本代表に選出されたという、輝かしい経歴を持つ選手である。
主将就任の経緯を問われ、曽根は「自分からやらせてくださいと立候補しました」と明かした。
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他には、地区予選初戦とは思えぬ雰囲気での試合となったことなどについても質問が飛んだが、曽根はあくまで一選手であり、一高校生である。松本監督ら指導陣への取材以上に質問内容が制限され、多くが「ご遠慮ください」の言葉でシャットアウトされた。
取材終了後、一部の記者が取材のかじ取りを行った県高野連関係者の下に駆け寄った。ときに過剰にも感じられた取材統制への抗議である。件の関係者が伏し目がちに、「申し訳ない思いもある」と返答していた。
聞くと、質問内容を今回の試合の内容に限定するのは、広陵、県高野連の意向が一致した上での決定だったという。
部長は直前まで“バスケ部顧問”
松本監督、曽根新主将とも終始表情は硬かったが、2人の間で取材を受けた瀧口貴夫新部長は自然体だった。最初に問われたのは、「部長就任の心境や今後の展望」だったが、それに対する回答はこうだった。
「そんなに色々と考えたりする余裕はなくて。今日、初めてベンチの中から野球を見ましたんで、全てが新鮮で。いろいろ感心させられることばかりでした」
瀧口新部長は直前まで男子バスケットボール部の顧問を務めていた。年度内での突発的な体制変更だったため、本人曰く「男子バスケット部にも(顧問として)名前は残っている」状況での部長就任だったそうだ。
未曾有の状況で突発的に春夏計53度甲子園出場の名門のスタッフに加わった、野球経験を持たない64歳。自分の置かれている状況に理解が追い付いていないようにも感じられたが、それも無理はない。
時おり柔らかい表情も浮かべ、いかにも好々爺といった印象の瀧口部長だが、「部長として選手たちに伝えていること」を問われると、言葉にこの日一番の熱がこもった。


