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張本美和が涙の訴え「早田ひなのタイムアウト」は本当に“不公平”だったのか? 兄・智和は「許せないと思います」日本人対決で起きた“違和感の論点”
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/14 17:00
8月9日、早田ひなとの試合後に複雑な胸中を明かした張本美和(17歳)
「大会の治療の方がいて、そこまでは意見はないけど、途中から(早田の)コーチでもある方が治療をされていたので、そこはすごく疑問に思いました。アドバイスだってできるかもしれないし、そこはすごい試合中も疑問に思いながら待っていました」
早田のケアにあたったのは、早田のフィジカルトレーナーであり、そしてこのところは早田のベンチコーチを務める岡雄介氏であったことへの違和感だった。
翌日には兄である張本智和もこのメディカルタイムアウトについて、「許せないと思います」と言及した。
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「メディカル兼コーチかもしれないので、中立のトレーナーがやるべきだと思います。もし何も会話をしていなくても疑われてもおかしくないし、認められないと思います。していなかったと言おうが、妹は疑念のまま試合をし続けたと思うので」
張本兄妹が言及した「不公平」の内実
張本美和と張本智和が共通して指摘したのは、「不公平」であるということだ。
どういうことかというと、日本選手同士が対戦するとき、慣習としてどちらの選手にもベンチコーチがつかない(これは日本だけの話ではない)。だから張本と早田の試合も、それぞれにコーチはつかなかった。
だがメディカルタイムアウトで、大会側の医療スタッフではなく、岡氏がケアにあたった。すると、ケアしながらアドバイスすることが可能な状況が生まれる。
一方の張本は一人だ。実際に岡氏がアドバイスしてもしていなくても、そうした状態が生じたことを智和は疑問視する。アドバイスがなくても、一人で居続けるのとでは心強さが違うだろう、という指摘もあり得る。
要した時間は規定通りでありオーバーはしていないが、メディカルタイムアウトの前段階から含めれば、観ていても「長いな」と感じさせるくらいの時間ではあった。疑念を抱えながら一人で待ち続けた時間が試合に影響しなかったとも言い難い。

