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豊橋中央の応援でまさか…“超異例の助っ人”が出現「地方大会決勝で敗れた相手」を東邦がサポート「同じ愛知の仲間」「即答でOK」甲子園ウラ話
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梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2025/08/10 11:14
「決勝で豊橋中央に敗れた」東邦高の吹奏楽部が豊橋中央を異例のサポート(写真は2016年夏)
決勝戦から3日後、東邦に1本の電話がかかってきた。豊橋中央の事務長、齊藤達也氏からだった。「甲子園で友情応援をお願いできないでしょうか」との依頼に、対応した東邦・袴田克彦事務部長は「いいですよ」と即答。袴田氏は、自校のマーチングバンド部が、東邦野球部が甲子園に行くことを前提にスケジュールを組んでいたため、駆けつけられる状態だったのを知っていた。さらに、マーチングバンド部がその依頼に応えてくれるであろうことも。
「(東邦事務部長の)袴田さんはうちの元野球部ですし、すぐに話がまとまりました。マーチングバンド部の生徒たちは、最初複雑に思っていた子もいましたが、すぐに気持ちを切り替えて、今では豊橋中央の生徒になりきって練習しています(笑)」(白谷氏)
白谷氏は、東邦野球部監督の山田祐輔氏にも確認したが、「ぜひ応援してあげてください」と快諾。「センバツの練習にもなりますしね」と笑っていたというが、「春こそはうちが」という決意の表れだろう。
東邦も大阪桐蔭に助けられた過去
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東邦は、2019年のセンバツで、同校初の友情応援をお願いしたことがあった。マーチングバンド部の海外遠征が重なり、どうしてもスケジュールが調整できなかったのだ。依頼した相手は、大阪桐蔭吹奏楽部。日本トップクラスの吹奏楽部が、東邦の友情応援を快く引き受け、吹奏楽コンクール全国大会金賞の輝かしいサウンドで完全に再現。華やかで頼もしい応援が大きな力となり、東邦は見事優勝。第61回の平成最初のセンバツ以来、平成最後の大会で30年ぶりの優勝を果たしたのだ。準決勝から、帰国した東邦マーチングと大阪桐蔭による合同応援で、生徒たちにとっても貴重かつ素晴らしい思い出になった。当時のことを、白谷氏はこのように振り返る。
「6年前のあの経験で、友情応援に対する考え方がガラリと変わりました。それまでうちは、他校の応援をしたこともなければ、してもらったこともなかった。大阪桐蔭さんが一生懸命応援してくれて心底感激し、『うちも困っている学校があればぜひ力になりたい』と強く思ったんです」(白谷氏)
この出来事を機に、東邦は同2019年夏の甲子園で、吹奏楽部のない誉(愛知)の応援に手を挙げた。2024年のセンバツでは、吹奏楽部の人数が少ない京都外大西の友情応援も引き受けている。


