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「大相撲三役→現在は美容品開発」青森で育った“わんぱく少年”の意外すぎる半生「高校中退して部屋入門…リスクは考えなかった」 

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石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

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photograph byL:JIJI PRESS、R:Fumiya Utetsu

posted2025/07/30 11:03

「大相撲三役→現在は美容品開発」青森で育った“わんぱく少年”の意外すぎる半生「高校中退して部屋入門…リスクは考えなかった」<Number Web> photograph by L:JIJI PRESS、R:Fumiya Utetsu

元小結・阿武咲こと、打越奎也さんは引退後にスキンケア商品を扱う会社に就職。自ら商品開発の現場にも足を運ぶ

 息子の決断に父はまったく反対しなかった。

「『ちゃんと考えたの?』って言われて『そうだね』って。普段から口うるさいタイプではなかったんですよ。父は仕事に対してすごく真面目な人で真摯に向き合う大切さは背中を見て学んだのかもしれません。悪いことをしたときだけはボコボコにされましたけど(笑)」

 青森・三本木農高(現・三本木農恵拓高)では1年時に全国高校相撲大会と国体相撲少年の部個人戦で優勝。「もっと相撲に時間を費やしたい」と考えた打越さんは、同校を中退。阿武松部屋の門を叩き、2013年、当時16歳のときに初土俵を踏んだ。

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「あえて厳しい部屋を選んだのは力士でいられる時間は限られているからこそ。ぬるい環境にいたら人間は緩んでしまうので、とことんやれる環境に身を置きたかった」

2017年九州場所で小結に昇進

 現役時代は鋭い立ち合いからの押し相撲を武器に2017年九州場所で新小結に昇進。幕内を42場所務め、通算成績は297勝287敗46休。殊勲賞1回、敢闘賞3回という輝かしい成績を収めながらも、近年は膝や足首、腰、肩の怪我を抱えて満身創痍だった。

 東十両10枚目だった2024年11月の九州場所は途中休場。日常生活でも夫人の助けを借りなければ普通に歩行ができなかった。「もう相撲とれる体ではなくなっていた」と引退を決意。今年6月1日に断髪式を行い、マゲにも別れを告げた。

「自分は稽古で上に上がってきた自信があったからこそ、稽古ができなくなったときにはもう限界なんだと悟りました。2場所連続休場明けで、最後の場所になった九州場所前も膝の状態がよくなくほとんど稽古ができませんでした。この場所、ダメだった時のことは考えないようにしていましたが、なんとなく自分の中で答えは出ていたんです。だから“これでダメなら辞めよう”って。だからこそ九州場所は最後の悪あがきだと思い、足がなくなってもいい覚悟で挑んでいました」

【次ページ】 「明日から休場させてください」

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