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「大相撲三役→現在は美容品開発」青森で育った“わんぱく少年”の意外すぎる半生「高校中退して部屋入門…リスクは考えなかった」
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph byL:JIJI PRESS、R:Fumiya Utetsu
posted2025/07/30 11:03
元小結・阿武咲こと、打越奎也さんは引退後にスキンケア商品を扱う会社に就職。自ら商品開発の現場にも足を運ぶ
昨年九州場所12日目の琴栄峰戦。右膝の痛みを抱えた打越さんは生命線ともいえる突き、押しの威力を欠き、完敗した。
「そこで悔しい気持ちがあればやろうと思っていました。でも、最後負けたときになんだか気持ちがすっきりしたんですよ。それでも一旦、冷静になろうと思ったんですが、取組直後の風呂の中でも、『終わった』『悔いはなし』という気持ちが心の中をしめていましたね」
師匠には「明日から休場させてください」と引退の意思を伝えたという。
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「普段、涙を流すことはないんですけど、そのときは涙が出てきたんです。でも泣いている感覚もないし、何が悲しくて泣いているかもわからなくて。すべてから解放されて自然と出てきたのか……未だにあれはどういう涙だったのか自分自身も分からなくて。不思議な涙でしたね」
奇しくも、幼い頃から切磋琢磨してきた盟友・貴景勝も同じ時期に土俵を去った。
〈第3回に続く〉


