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白鵬が語った「負けは死だと思っている」危険なダメ押し、肘打ち…“誰もが惹かれる好人物”なぜ土俵で豹変?「部屋閉鎖処分は本当に“重すぎた”のか」 

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荒井太郎

荒井太郎Taro Arai

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2025/07/10 17:02

白鵬が語った「負けは死だと思っている」危険なダメ押し、肘打ち…“誰もが惹かれる好人物”なぜ土俵で豹変?「部屋閉鎖処分は本当に“重すぎた”のか」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

荒々しい取り口がたびたび問題視された白鵬。その是非をめぐって大きな“分断”が生まれた

好人物がなぜ土俵で豹変?「負けは死だと思っている」

 27年初場所で新記録となる33回目の優勝を達成すると、一夜明け会見では唐突に「子供が見ても分かるような相撲。なぜ、取り直しにしたのか。ビデオ判定(係の審判員)は何をしていたのか。もう少し緊張感をもってやってもらいたい」と13日目の稀勢の里戦を取り直しにさせられたことで、審判団を痛烈に批判した。いくら優勝回数で歴代1位に立った横綱でも大先輩である親方衆に対し、明らかな越権行為だ。

 危険な“肘打ち”が多用され出すのも、この場所の前後あたりからだ。同年九州場所中に北の湖理事長が死去した際、「理事長の手から一代年寄をもらいたかった」と語った。現在は廃止されている「一代年寄」は、著しい功績を残した横綱に与えられ、引退後も現役名のまま年寄として待遇される制度で、大鵬、北の湖、千代の富士(辞退)、貴乃花に授与されている。当時の白鵬はモンゴル国籍のまま、特例でこの栄誉に浴したかったことがうかがえる。荒々しい土俵態度や舌禍騒動は願いが絶たれ、行きどころのない感情が抑え切れずに暴発してしまった結果のようにも見える。

 素顔はとても穏やかで接する者は皆、その人間的魅力に思わず心が惹かれてしまうほどの好人物が、土俵の上ではなぜ豹変するのか。尋ねてみたことがある。

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「大鵬関は負けたら引退と思っていたようですけど、僕は負けは死だと思っている。死ぬか生きるかに美しさはないと思っている。僕の場合は(当時は)帰化してないわけだから、引退したら帰らないといけない。そういう勝負に対する思いがときに(ダメ押しなどで)出てしまうんだろうね」とややバツが悪そうに語る姿に引き込まれ、つい首肯しそうになった。

【次ページ】 問題の核心「宮城野部屋閉鎖」の処分は重すぎたのか

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