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大相撲PRESSBACK NUMBER
“最強の横綱”白鵬の功罪を検証する「異次元の記録、社会貢献にも尽力」衝撃の退職は“避けられなかった”のか?「旧態依然の相撲協会」批判の声も
text by

荒井太郎Taro Arai
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/10 17:01

6月9日の会見で日本相撲協会を退職することを発表した白鵬。不満を述べることなく、静かに協会を去った
「(宮城野部屋復興に向けて)去年の話と今年に入ってからの話には、多少のズレがあった」とその理由を語ってはいたが、相撲協会と対立して退職した貴乃花親方のケースとは異なり、波風を立てずに静かに協会を去った。60分が予定されていた会見は45分ほどであっさり終了。人生の大きな決断にも「悔いは全くありません」と言い切った。
「弟子たちが横綱、大関になるのを近くで見たい」という師匠としての思いよりも、自分の夢や未来のほうが優っていたということだ。
優勝45回、通算1187勝…白鵬が残した“異次元の記録”
優勝回数や勝利数等、数々の突出した史上1位の記録を残した大横綱でさえ、去らなければならなくなった協会の姿勢を“旧態依然”と批判する向きも少なくない。だが、同じ日本の伝統文化の中にいても、そもそも白鵬さんの視線は現役時代から常に外の世界に向いていた。今回の退職劇は“方向性の違い”としか言いようがなく、遅かれ早かれ、こういった事態はいずれ訪れていたのではないだろうか。
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横綱白鵬の言動はいつも周囲に嵐を巻き起こし、多方面からその「功罪」が語られ、擁護派とアンチとの間には、決して埋まることのない溝ができる。人気が高まれば、それだけアンチも増えるが、ここまで“分断”を生じさせた大横綱は過去にはいない。
45回の優勝は、永遠に破られないであろうと思われてきた大鵬の32回を大きく上回る。平成18年夏場所で新大関優勝を果たしたのを皮切りに、22年春場所からは不祥事がもとで前場所に電撃引退した横綱朝青龍と並ぶ、史上1位の7連覇を達成。さらに26年夏場所からは6連覇。この間に“大鵬超え”を果たし、その後は優勝回数の新記録を更新していき、29年九州場所は40回の大台に乗った。そして、実質的に現役最後の場所となった令和3年名古屋場所で最後の優勝を全勝で飾り、次世代の力士に引導を渡されることなく、王者のまま土俵を去った。
通算勝利数1187勝は2位魁皇を140勝も上回り、幕内勝利数1093勝に至っては2位魁皇と214勝もの開きがある。横綱勝利数899勝は2位の北の湖と229勝差。優勝や勝利数に関する記録は白鵬が歴代トップをほぼ独占する。