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「中谷潤人がニヤッと笑った」“エグいアッパー”を連打して…カメラマンが戦慄した“好青年・中谷の豹変”「西田凌佑のカウンターも入っていたが…」
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福田直樹Naoki Fukuda
photograph byNaoki Fukuda
posted2025/06/14 11:30
「普段はにこやかな好青年なんですけど、試合になると容赦がない」。世界的ボクシングカメラマンが見た“中谷潤人の豹変”
腕や肩を殴る有効性については断言できないのですが、サウル・“カネロ”・アルバレスは二の腕のあたりを狙って腕を壊しにいくことがありますよね。果たして軽量級でも有効なのか……。ただ、中谷選手はパンチのスイートスポット、ダメージを与えられる“芯”の部分が、普通のボクサーよりも広い。感覚的には拳ふたつ分くらいある。あくまで素人考えですけど、中谷選手のパワー、あのパンチのアングルだったら、急所ではなく腕や肩を叩くことにも効果がありそうな気もします。ルディ(・エルナンデス)トレーナーならそういう戦術を仕込んでいてもおかしくない。腕のどこを狙ったら効くのか、考えている人がいるのかもしれません。
一瞬、視線が交わり「本当に余裕があるんだな…」
具体的に西田選手の異変を感じたのは5ラウンドでした。その時点で肩を脱臼しているとはわかりませんでしたが、微妙に構えが変わっていた。ガードの仕方も少し変わって、前のラウンドより若干頼りなく見えました。そのガードの隙間から中谷選手のいいワンツーが入るシーンもあり、いろんなダメージが積み重なっているのを感じました。
中谷選手が5ラウンドの最後に大きな空振りをして、ニヤッと笑いましたよね。ちょうどカメラから顔を離したタイミングで、彼がこちらを向いたので視線が交わったんですよ。試合後には照れ笑いだと言っていましたけど、あそこで「ああ、本当に余裕があるんだな」と感じました。あれだけ打ってもまだまだ燃料が残っている。とんでもないスタミナです。「この戦い方で大丈夫か」というのは、外野の杞憂でしかなかったんでしょうね。
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右目と右肩の問題もあり6ラウンドで優劣がはっきりして、西田選手は陣営の判断で棄権するわけですが、ボクサーとして株を上げたのは間違いないでしょう。中谷選手がダビド・クエジャル戦のように畳み掛けるシーンも二度、三度とあったのに、すべて耐えて地道に左ボディを打ち返して……。左のカウンターもきれいに何発か入っていた。コンパクトでシャープなパンチと、体と気持ちの頑強さ。多くの人の前で「西田も相当強い」と証明された。まだ本人の意志やケガの具合はわかりませんが、アマ時代はライト級で戦っていた選手ですからね。スーパーバンタム級に上げて減量苦から解放されたら、より強さを発揮する可能性もあるのではと思っています。


