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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「5R終了後にニヤリ」日本人王者対決で中谷潤人が“勝利を確信した瞬間”…元世界王者・飯田覚士の見解「今回の戦い方は井上尚弥に通用するのか?」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/06/11 17:03
日本人世界王者対決となった中谷潤人vs西田凌佑の激闘を元世界王者・飯田覚士が徹底解説した
「うまかったですね。手首のスナップを使うジャブで閉じているガードの隙間をグローブ1個分だけ広げておいてから、左を打ち抜きました。ガードを弾く強いジャブも選択肢にあったはずですが、それでは次に威力あるパンチが来ると西田選手に反応されてしまう可能性があった。だからねじ込むようなジャブから肩をすくめたフルパワーじゃない窮屈なストレートにしたんだとは思います」
豪快なボクシングから一転して見せた繊細。そのギャップこそが突破口となる。パンチが効いたとみるや、一気に襲い掛かる。右ロングフックからの左ストレート、右アッパーの連続から左フック、右アッパーからのストレート。しかし西田も追撃を許さない。
「普通なら仕留められてもおかしくありません。耐えながら、かつ的にならないようにそこからちゃんと動いていく。ああいう場面でも冷静な西田選手はさすがでした」
5ラウンド終了後に中谷がニヤリ
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5ラウンドのラスト、大きな右フックを空振りして終了のゴングを聞いた中谷はニヤリと笑っている。勝利を確信した、と飯田には見えた。
「中谷選手が上に跳ねるようなステップをするんですよね。これ(バンタム級王座を獲得したアレハンドロ・)サンティアゴ戦もそうだったんですけど、スピードを上げて仕留めにいく合図みたいな。6ラウンドに入って1分くらいに左のオーバーハンドをダブルで打ったのは驚きました。右で返すなら分かりますけど、足腰、体幹がしっかりしていないと普通はできないですよ。完全に倒すモードになっていましたけど、西田選手もそうさせない。上に跳ねると距離をつぶしてくるんですよね。そういったところも研究していたんじゃないかと感じました」
西田も負けじと打ち合いに応じる。中谷優勢のラウンドではあったものの、断じてひるむことはなかった。
しかし結局は6ラウンド終了後、右肩の脱臼によって西田サイドが棄権を申し出る形で、中谷のサプライズで始まった激戦に終止符が打たれる。チャンピオン同士の戦いにふさわしい真っ向勝負に、有明コロシアムの会場は最後までヒートアップしたままだった。“パワフル潤人”という新たな一面を披露した中谷は言うまでもなく、果敢に立ち向かった西田もまた評価を上げた。
今回の戦い方は井上尚弥に通用するのか
統一戦をクリアした中谷が来春に計画される井上尚弥とのビッグマッチに向けてまた一つ近づいたことは言うまでもない。リングサイドで観戦した井上に対しても猛烈なアピールとなったはずだ。



