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「ほう…長嶋茂雄あってのナンバーですからね!」あの長嶋さんが…巨人担当記者が振り返るミスター昼寝秘話と伝説の表紙「長嶋茂雄にラブコールを!」

posted2025/06/06 17:01

 
「ほう…長嶋茂雄あってのナンバーですからね!」あの長嶋さんが…巨人担当記者が振り返るミスター昼寝秘話と伝説の表紙「長嶋茂雄にラブコールを!」<Number Web> photograph by Ichisei Hiramatsu

Number本誌の表紙登場回数は16回を数えた長嶋茂雄さん

text by

鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph by

Ichisei Hiramatsu

 元巨人・長嶋茂雄さんが6月3日、肺炎のため東京都内の病院で亡くなった。89歳だった。「ミスタープロ野球」としてファンに愛された国民的スーパースター。長嶋茂雄さん逝去にあたり、これまで有料公開していた記事を特別に無料公開します。【初出:Number1001号(2020年4月16日発売)】

「長嶋さんが昼寝したいといっているんだ」

 まだスポーツ紙の駆け出し記者で、中日担当をしていた1987年2月のことである。

 故・星野仙一さんが中日監督に就任した1年目。沖縄・石川のキャンプに、当時浪人中だった長嶋茂雄さん(現巨人軍終身名誉監督)がやってきた。

 長嶋さんと星野さんは「仙ちゃん」「ミスター」の昵懇の仲。他チームのキャンプを視察して、昼過ぎに石川野球場にやってきた長嶋さんの取材はサクサクと進んでいった。すると一緒にキャンプを回っていた先輩記者から突然、こんなことを耳打ちされたのである。

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「長嶋さんが疲れて、少し昼寝がしたいといっているんだ。キミのホテルは近いのか?」

 はあ? 近いには近いんですが……昼寝……ですか?

「うん。もちろんベッドだろ?」

 米軍の将校が使うホテルなので、部屋も広くてベッドもダブルです。

「そうか。それなら大丈夫だな」

 て、ことで突然、あの長嶋さんがしがない若輩記者の部屋にやってきたのである。

「なかなかいい部屋じゃないですか。景色も綺麗だ」

 小高い丘の上のホテルの窓から、彼方に広がる太平洋を見てこう言うと、長嶋さんは靴のままベッドに寝そべり、ものの5分もしないで寝てしまった。仕方ないから先輩記者とロビーで待っていると、30分ほどでエレベーターから降りてきた長嶋さんは「さあ行きましょう」と言い残して、それこそ風のように去っていった。

 それから5年後の'92年オフに、長嶋さんは巨人の監督に復帰。記者は巨人担当キャップという立場で取材をさせてもらうこととなり、最初に挨拶をしたときのことだ。恐る恐るあの沖縄の記者が自分だったという話をしてみた。

【次ページ】 バッシングの中「長嶋茂雄にラブコールを!」

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