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「オレ、中日行きたいって言ったのに!」元日本ハム投手が告白…“消された中日トレード”、星野仙一もキレた「ふざけんな! お前のせいだ」
text by

遠藤修哉Naoya Endo
photograph bySankei Shimbun
posted2025/05/30 17:50

1998年11月、ダイエーから中日に移籍した武田一浩。じつはこの3年前に“消えたトレード”があった
「11月半ば。朝、仙さんから『(トレードが)中日に決まったから』と電話がかかってきた。そして午後、仙さんが鴨川で秋季キャンプをやっていた上田(利治)さんに電話をかけた。当時は携帯がない時代で、取り次いでもらったんだろうけども、『何回かけても出ない』って仙さんが言うから、俺が電話したのよ。そしたら上田さんが出て『球団から電話行くから』って。それを仙さんに伝えたら、『ちょっとやばいかもな……』って」
しばらくして、日本ハム球団から電話がきた。武田は、「中日ですね?」と確認する。しかし返ってきたのは「明日、球団に来たらわかるから」という曖昧な返答。そして翌日、球団事務所で「ホークスだ。ダイエーにトレードが決まった」と告げられた。
「いやいや、中日って言ったじゃないですか。夏からずっと中日に行きたいって言ってたじゃないですか!」
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武田は自分の希望を球団にシーズン中から伝えていた。激怒した武田は、「絶対に後悔させます」と言い残し、事務所を出たという。
星野の怒り「ふざけんな!お前のせいだ!」
このトレードの背景には、日本ハムの編成事情があった(結果的に、ダイエー側=武田一浩・松田慎司と日本ハム側=下柳剛・安田秀之が交換トレードされた)。
左腕の河野博文がFAで巨人へ移籍したため、その穴埋めとして左投手を探していた日本ハムは、ダイエーから提示された下柳剛に惹かれた。また、当時の中日側が交換要員として与田剛の放出を渋ったという事情も重なり、武田のトレード先は土壇場でダイエーに変更された。
「仙さんも『やられたよ』って言ってた。上田さんにも『ふざけんな!』って怒ってた。オレに怒られても困るんだけど、なぜか仙さんから『お前のせいだ!』って言われた(笑)」
この移籍劇によって、星野と上田という名将同士の確執が生まれた。
一方で、このトレードは武田のキャリアにとって転機となる。翌1996年、新天地のダイエーで15勝を挙げる復活劇を演じたのだ。