プロ野球PRESSBACK NUMBER
沢村賞を争ったのは「同期・野茂英雄」だった…あの“伝説回ドラフト”の広島1位指名・佐々岡真司がライバルを超えた日「18年の現役生活で一番投げた」
text by

中島大輔Daisuke Nakajima
photograph byL)KYODO、R)Tadashi Hosoda
posted2025/05/29 11:04

現役引退後は広島の監督も務めた佐々岡真司さん。現在は女子野球・三次ブラックパールズのGMを務めている
9月の4試合で“すべて完投勝利”→悲願の優勝へ
2日後の8月27日、7回途中から2番手で1991年シーズン初のリリーフに上がり、2/3イニングを抑えて勝利に貢献。山本監督は「佐々岡(のリリーフ)は予定通り」と話した。
さらに4日後の8月31日には、3.5ゲーム差で迎えた中日戦で先発する。8イニングを投げて自責点3と試合をつくったが、味方が零封されて敗れた。
逆転優勝へ負けられない広島は翌日、9回裏に中日のルーキーで守護神・森田幸一を捉え、土壇場でサヨナラ勝利を収める。中日はこの後、2勝12敗と負けを重ねていく。
ADVERTISEMENT
対して、広島を上昇気流に乗せたのは佐々岡だった。9月5日の阪神戦で先発完投して12勝目を飾ると、同8日の巨人戦では6回1死からリリーフ。山本監督はこの一戦に佐々岡だけでなく、長冨浩志、足立亘と先発陣を注ぎ込み、接戦をもぎ取った。
その3日後、佐々岡は中日戦で先発して自責点3、被安打6で完投勝利。優勝に向けて大きな白星をチームにもたらした。
9月は4試合に先発し、「過密日程だから、僕が一人で投げなければ」とすべて完投勝利を飾る。前年9月、1991年5月に続く、自身3度目の月間MVPに選ばれた。
そしてマジック1で迎えた10月13日、阪神とのダブルヘッダー。初戦は落としたものの、2戦目は先発の佐々岡が7回までゼロに抑える。1対0で迎えた最終回は守護神・大野豊が締め、5年ぶり6度目のセ・リーグ制覇を果たした。
沢村賞の最終選考を争ったのは、同期・野茂英雄だった
結局プロ入り2年目は31試合に先発し、リーグ最多の240イニングに登板。17勝9敗で最多勝、防御率2.44で最優秀防御率に輝いた。
「18年間の現役生活で一番投げました。優勝もして、タイトルも獲れて、自分の成績、気持ちとしても一番のシーズンでした」
日本シリーズでは1、4、7戦に先発、力投は報われずに広島は敗れたが、1991年のプロ野球を最も盛り上げた一人は間違いなく佐々岡だった。
記者投票で年間MVP、ベストナインを受賞すると、投手にとって最大の栄誉である沢村賞にも選出された。最終選考を争ったのが、社会人時代から切磋琢磨してきた野茂英雄(近鉄)だった。