核心にシュートを!BACK NUMBER
「ケビンのパッションを引き継いで…」Bリーグでプレーオフ決勝進出…宇都宮ブレックス躍進の陰に“46歳で急逝”ヘッドコーチの存在アリ
text by

ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by(L)JIJI PRESS、(R)Yusuke Mimura
posted2025/05/25 17:02
今年2月、46歳の若さで急逝した宇都宮ブレックスのケビン・ブラスウェルヘッドコーチ。それでもチームには多くの財産を残したという
そして、残り4分55秒の時点で、最大で20点あったリードを6点にまで縮められてしまった。ただ、昨シーズンよりも早いペースのバスケを身につけたチームは、そこからグラント・ジェレットと比江島慎が連続3Pを決め、勝ち上がりを決めた。
こうして、ブラスウェルHCが求めたものを身に着け、昨年の借りを一つずつ返しながらブレックスはファイナルまでたどり着いた。
ライバルにも受け継がれる「ブラスウェルの流儀」
決勝の相手は4季連続でファイナルに進出している琉球ゴールデンキングスである。
ADVERTISEMENT
しかもゴールデンキングスでアソシエイトヘッドコーチを務めているのは、昨シーズンまでブレックスのHCを務めていた、あの佐々なのだ。
今年3月23日のこと。ブレックスは、ファンを筆頭にブラスウェルを支えてくれた人たちのためのお別れの会である「KEVIN BRASWELL Memorial Ceremony」を試合後に実施した。会場に来られなかった佐々は、そこに寄せたビデオメッセージで以下のように語っている。
「これからもケビンの気持ち、パッションを引き継ぎながらやっていきます。自分がかかわるこれからの選手たちにも、ケビンの一部というものを植え付けていけると思うので。(ケビンと)かかわった人間はそういう責任を果たして、これからのバスケット界、ケビンのため、ケビンの家族のために……。どれくらいケビンが偉大だったのかを残せるのがこれからの僕たちだと思っている。ケビンのためにも、キングスと宇都宮ブレックスの戦いを必ずCSで実現させたいと思っています」
佐々はブレックスのHCとしてはCS準々決勝で敗退に終わったが、自身をサポートしてくれていたブラスウェルとともに、51勝9敗というブレックス史上最高となるレギュラーシーズンの成績を残している。そして、今はキングスのコーチの一人として、ブラスウェルから学んだことと受け継いだ情熱を力に変えている。
今回ブレックスが優勝すれば、全チーム最多となる3度の優勝を誇るチームとなる。
一方のキングスが優勝すれば、アルバルク東京、ブレックスと並んで、史上最多タイの2度目の優勝を記録することになる。
ブラスウェルのバスケ人生の幕はまだ下りてはいない。彼の遺志を引き継ぎ、心を揺さぶられた者たちが、今回のファイナルで頂点を目指して戦っている。

