「何かあったのか、野茂？」「こんなの、考えられません」野茂英雄が激怒！ “気遣いできるエース“阿波野秀幸が見た1994年の近鉄「衝撃の事件」 

「しゅっとした男」阿波野

　浪速のカラーを存分に醸し出していた、その“いてまえ感”と、阿波野のたたずまいはどこかしら、違う感じがした。存在が浮いているとか、そういうことではない。関西のコテコテ感と、阿波野のスマートさのミスマッチとでも言おうか。関西風に表現すれば、阿波野がちょっとばかり「しゅっとし過ぎて」いたのだ。

　そのスマートな左腕が、近鉄の一時代を確かに彩っていた。

　1986年のドラフトで、巨人、大洋（現DeNA）との競合の末、亜大から近鉄に入団したルーキーイヤーの87年、15勝を挙げ新人王。2年目の88年には、球史に残る名勝負「10・19」の主役の一人となった。シーズン最終戦のロッテとのダブルヘッダーは、敵地・川崎球場で連勝すれば逆転優勝。その2試合、阿波野はいずれもリリーフで登場。初戦の逆転勝利に続き、連投となった2戦目も、阿波野は1点リードの8回から登板した。ところがロッテ・高沢秀昭に同点弾を浴びてしまう。

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　9回に判定を巡り、敵将・有藤道世が猛抗議。その“ロスタイム”が響き、延長10回引き分けでV逸。しかし、3年目の89年、前年のリベンジとばかりに19勝をマーク、最多勝のタイトルも獲得した阿波野は、優勝決定時の「胴上げ投手」に輝いている。

1989年の優勝決定の胴上げ投手となった阿波野　©Kazuaki Nishiyama

阿波野秀幸の足跡

　95年からは巨人、98年からは、近鉄時代の2年間、投手コーチだった権藤博が監督を務めていた横浜（現DeNA）に移籍、横浜が38年ぶりの日本一に輝いた98年には、主に中継ぎとして50試合に登板するなど、14年間の現役生活の間に、ドラフト会議で競合した3球団すべてに在籍、優勝を経験して日本シリーズ出場を果たすという、第一線で長く活躍した証明でもある快記録も達成。

　2000年の現役引退後は巨人、横浜、中日でコーチを歴任。2025年現在、野球評論家として、今なお野球界で精力的に活動を続けている。

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